仕事の質とスピードはメモで決まる──。サントリー「伊右衛門」ほか、数々の名作CM・ヒット商品を生み出してきたクリエーティブ・ディレクター、小西利行さんの仕事の秘訣は、独自の「メモ術」にある。そのノウハウを誌上で大公開。

未来の自分に指示を与える

メモの取り方を変えるだけで、仕事のスピードも質も格段に高まる。私の人生はメモで変わった、と断言してもいい。そもそもメモとは何か。多くの人は会議の議事録のような、情報を記録するメモを思い浮かべると思う。だが、それは入り口にすぎない。当たり前のことだが、メモ自体は何も考えてくれない。考えるのは自分の頭だ。メモの本当の役割は、アイデアを考えたり思考を深めたりするきっかけをつくることにある。

コピーライター、クリエーティブ・ディレクター 小西利行氏

私は自分のメモ術を総称して「未来メモ」と呼んでいる。なぜ「未来」なのか。例えば今日の会議内容をメモしたとして、実際にそのメモを使うのはいつだろう。おそらく会議が終わった直後から「よし、さっそく課題について考えよう」という人は少ない。3日後とか10日後とかにメモを見返して、課題を整理することになるはずだ。そのときになって「何を考えればいいんだろう」と困らないように、「大事なのはこれとこれ。ここから考え始めるといい」という内容をメモしておいて、未来の自分に指示を与えるのだ。

具体的なメモの取り方に移ろう。情報を記録する際に、必ず習慣づけたいことが3つある。

まず、すべてのメモに日付とテーマをつけること。会議のメモであれば、出席者も忘れずに記しておこう。それさえあれば、時間が経ってからでもお目当てのページを探しやすい。デジタルデータにタグづけするのと同じく、紙のメモにも検索しやすい工夫が必要だ。

次に、その日のメモの中で、1番重要だと思うものを3つだけ選んで目立つ印をつけること。私はグルグルと二重丸をつけることにしている。さらに、「→(関連性)」「○×(よい・悪い)」「VS(対立概念)」など、自分がわかりやすい簡単な記号をつけると、メモされた言葉の位置づけや重要度を整理できる。

もう1つ、マンガのような吹き出しを使って、誰かの意見や雑多な思いつきもメモしておこう。こうして様々な痕跡を残すことで、メモしていたときの気分や空気感まで後から思い出すことができる。