スマホやパソコン、テレビゲームでも将棋を楽しむことはできます。しかし、私はやはり駒と盤を使って、実際に駒を動かしながら将棋を指すことをお勧めします。ゲームの世界だと画面だけに没頭してしまいますが、駒と盤があれば子どもと一緒に考えてあげることもできますし、盤の前にしっかりと座ることで集中力も養われるでしょう。それほど高価なものでなくても構いませんので、ぜひお子さんに駒と盤を買ってあげてください。

また、お子さんが将棋を始めたら、「こんな手を思いついてすごいね」「あ! この手は気づかなかった!」などと、子どもと一緒に将棋を指すことを楽しむようにしてほしいですね。今はスマホやゲームなど、一人でできる遊びに没頭できる子どもが増えていますので、親子で一緒に楽しめる将棋を指すことは、お子さんにとっても新鮮なことではないでしょうか?

「将棋は楽しい」と態度で示そう

お子さんが少し慣れてきたら、お父さんやおじいちゃんから「将棋を一緒に指してみない?」と声をかけてみましょう。昔将棋をしたことがある人も多いと思います。また兄弟や友達同士で指してみるのもとても楽しいものです。将棋をきっかけにたくさんの人と交流できるようになるといいですね。きっとますますやる気を出すと思います。

もちろん、お子さんに負けてしまった時は、親御さんも姿勢を正して「負けました」とちゃんと宣言してください。親が負けて、不満そうな顔をしていたり、怒り出したりするとお子さんが委縮してしまいます。また、駒の動かし方を間違えたとしても、いちいち目くじらを立てずに、おおらかに接してあげてください。将棋は楽しいものだということを、親御さんが態度で示していただきたいですね。

これが一番大切なのですが、お子さんと将棋を一緒にする時には、ぜひたくさん褒めてあげてください。「最後はあなたの王様も危なかったけど、うまく指したね、すごいよ!」「ここに歩を打ったのは良かったね」と具体的に良かったと思ったところを挙げてあげるとさらに良いと思います。

こうしたことに気を付ければ、将棋を通じてお子さんの能力がぐんぐん伸びていくと思います。ぜひ楽しく、気軽に将棋に取り組むお子さんがたくさん増えてくれると私もうれしいです。

加藤一二三(かとう・ひふみ)
将棋棋士/九段/第40期名人
1940年1月1日福岡県嘉麻市生まれ。仙台白百合女子大学客員教授。1954年、14歳で当時史上最年少の中学生プロ棋士となり、2017年6月20日に77歳で引退した現役最年長棋士(当時)。2000年、紫綬褒章を受章。バラエティ番組にも出演し、「ひふみん」の愛称でお茶の間の人気者になっている。
(構成=吉川正弘)
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