ソフトな大人が、ソフトな子どもを生んだ

子どもが親から手厚くケアされていることを象徴する光景は、家庭訪問調査でも見ることができました。実は子どもたちが家庭内で多くの時間を過ごす場所は、この20年で子供部屋からリビングに変化してきているのですが、調査で訪れたほとんどの家庭のリビングには、子どもたちの小さい頃の写真や絵、工作、賞状が並び、親にきちんと見守られていることが具現化された場所となっていました。

もちろん、子どもが非行に走る要因は一つではありませんが、不良が世の中から姿を消した背景には、敵だった大人がソフト化した結果、子どもは逆らい続ける必要がなくなった、ということが大きく影響していそうです。実際に、大人のソフト化と連動して、子どももソフトになってきています。それを示すのが、子ども調査で聴取している対人関係に関するネガティブな意識です。

青系は「学校へ行くのがいや」など学校や先生との関係性、赤系は「家出をしたい」など親との関係性、緑系は「友達と絶交」など友人との関係性に関する項目ですが、総じて今回の調査が過去20年間で最低となっています。反抗する相手がいなくなった子どもたちは総じて丸く、優しくなり、さまざまな面で門の立たない、つつがない暮らしを送るようになっているのです。これでは、不良が激減し、モテなくなるのも当然といえば当然でしょう。

濃密な親子関係の「光と影」

ただし、問題が全てなくなった、というわけでもありません。お互いソフトな親子の関係は、より濃密になりつつあり、「親の誕生日に何かプレゼントをしている」、「お母さんと一緒によく買い物に行く方だ」という項目も過去最高になりました。その反面、警察庁の統計では、子どもの家庭内暴力の発生件数が近年、小中高の全年齢で増加傾向にあることも示唆されているのです。

全体的に見れば子どもの生活は平和になりつつありますが、外からは見えにくい家庭の中で問題が抱えられている場合もあるのだ、ということは心に留めておく必要がありそうです。

▼「子ども調査」(2017年調査)​の概要
企画分析:博報堂生活総合研究所/実施集計:株式会社東京サーベイ・リサーチ/調査地域:首都40Km圏/調査手法:訪問留置自記入法/調査期間:2017年2月15日~3月21日/調査対象:2017年3月31日現在で小学4年生~中学2年生に在学する男女/調査人数:800人/公開データ:http://seikatsusoken.jp/kodomo20/overview/
酒井 崇匡(さかい・たかまさ)
博報堂 生活総合研究所 上席研究員
2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、教育、通信、外食、自動車、エンターテインメントなど諸分野でのブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。2012年より博報堂生活総合研究所に所属し、日本およびアジア圏における生活者のライフスタイル、価値観変化の研究に従事。専門分野はバイタルデータや遺伝情報など生体情報の可視化が生活者に与える変化の研究。著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。