公明党まで小池都知事を見捨てた

小池百合子都知事が希望の党の代表を辞任した。党の設立会見からわずか50日。もう何度目になるのかわからないが「都政に専念する」という宣言もあった。

事情を忖度するに、この一連の小池の動向には、水面下で都議会公明党の連立離脱の表明があったことは間違いないだろう。都議会では、小池が事実上率いる都民ファーストの会と公明とで過半数に達するが、反対に都議会自民と公明、共産の3党を合算しても過半数に達するのである。予算がスムーズに成立するかどうかはわからなくなった。さらに、都議会に都知事への不信任案が提出された場合、確実に共産党は賛成するので、自公の動向によっては可決してしまう可能性が高い。

小池は数々の政党、その時々の権力者の下を渡り歩いてきた。永田町には今回希望の党で生き残った議員など選挙のたびに所属政党が変わる「政党渡り鳥」がたくさんいるが、小池の場合はレベルが違う。自らが所属する組織や、そのときに身を寄せている権力者の勢いを正確に見極めて、「使えない」と判断したら即座に捨てて逃げ出して、自分に有利な組織に移るのである。

正念場を迎えつつある小池知事 「どんどん人が離れていく小池知事。敵対していた中国も含め、どんどん求心力が増す安倍総理」と飯島氏。「自分のことしか考えない人が日本社会でどうなっていくか、今後が楽しみだ」。(写真=時事通信フォト)

古くは新進党分裂や自由党分裂、最近では都知事選への立候補のための自民党離党を思い起こしてほしい。新しい道を選んだ小池が大きく飛躍するのと対照的に、過去にいた組織はボロボロに傷つき修復不可能な状況に陥っていく。日本新党も新進党も旧自由党もいまはない。都議会自民党も瀕死の状態から立ち直れていない。細川護熙は政界を離れて陶芸家になり、小池を引き上げた小沢一郎は小さな野党の代表でしかなくなった。自民党総裁選で小池から応援を受けた石破茂の人気も衰えた。小池と関わって政界を引退するまで無事だったのは小泉純一郎元首相くらいではないか。

小池が離れた後で政党や政治家が凋落したからといって、小池自身に実力があるわけではない。もともと問題を抱えて勢いがなくなっていたことに、いち早く気づいた小池がさっさと逃げ出したにすぎない。小池は沈む船から逃げ出す能力に長けたネズミとしての能力に秀でているというだけだ。

先に述べたように、都知事への不信任案が提出されれば、可決してしまう可能性が高い。その場合、そのまま引退してしまうケースもあるのではないかと考えている。

小池が都知事に就任して1年4カ月。小池が批判してきたことがすべてブーメランのように小池都政にダメージを与えてしまうという結果になった。過去からの問題はさらに悪化してしまった。

一番笑ってしまうのが、情報公開であろう。小池は都の情報公開が進んだとしてそれを宣伝するが、そんなことに納得できるわけがない。

都民からすれば、まったく関心のない分野の行政文書を大量に公開されたからといって、何らメリットを感じることはないだろう。むしろ豊洲市場への移転決定というもっとも肝心なプロセスを、小池自身が記録に残す意思すらなく、完全にブラックボックスになった。これで、森友や加計問題で行政文書が残っていないなどと安倍政権を批判するのだから、呆れるのを通り越して、どういう神経をしているのかむしろ興味が湧く。

最近になって、「東京を国際金融都市にする」と誰にも反対されそうにないことを強く言い始めたが、これも謎が多い。どうやら東京都で法人税減税を進めると言いたいようだ。

一瞬の間だけ小池とともに希望の党共同代表だった玉木雄一郎・希望の党代表は、法人税減税について、自身のブログでこう述べている。

「(日本の)大企業の『実際の』法人税率は、実は、中小企業の税率並み」
「単に名目上の税率にこだわった法人税減税には、政策効果が低い」
「『実際』の法人税率は、国際的にみてもそう高くはない」
「アメリカの法人税率は国際的にみても高いが、様々なベンチャー企業も生まれ育っている」
「『日本企業は、高い法人税に苦しんで国際競争力がない』といったステレオタイプの見方に縛られず、真に効果的かつ公平な税制とすべき」
(玉木雄一郎・アメーバブログ「実は高くない大企業の法人税率」2016年3月8日)

法人税減税について、玉木が鋭い知見を披露しているが、同じ共同代表だった小池はどういう理屈をつけているのだろう。玉木の持った法人税減税への疑念に対し、小池はきちんと説明をすべきだ。