そんなにうまくいくだろうか、と思うかもしれませんが、その有効性は歴史が証明しています。「嘘も100回つけば本当になる」方式は、第2次大戦中、ナチスドイツのプロパガンダで使われたもの。また、戦時中の政治家たちは、戦争に勝てると言い続けていたのに、負けた途端に「勝てるとは言っていない」と責任逃れをはじめたのです。

この一貫性効果を高めるためには、誰に対しても同じことを言うのが大切。人によって言うことを変えては、回り回って間接的に、「あの人は、本当はこんなことを言っていた」と伝わる可能性がある。そうなると、効果は薄まります。

ブラック企業の経営者、ハラスメント上司も実践

いつでも、誰に対しても徹底して否定することで、「あの人はこう言い続けている」と印象づける。聞いている側は「自分のほうが記憶違いをしているのでは」とか、立場の弱い人だと、「自分のほうが頭が悪いし……」と思い込んで、心細くなっていくのです。そうなれば、思う壺です。

続けて、聞いた側にプレッシャーをかけるやり方が考えられます。つまり、「言うことを聞かなければ、どうなっても知らないぞ」と圧力をかける。過去の発言について、「言った」と指摘するとマズいのではと思わせるのです。特に集団状態でこの状況に陥ると面倒です。集団のなかで同調圧力が生まれ、誰も指摘できない状況が生まれてしまいます。

ブラック企業のカリスマ経営者や、ハラスメント上司に、誰も文句が言えない状況などはまさに典型です。集合的無知が生まれ、「おかしいと思っているのは自分だけなのでは……」と、みんなが考えてしまう。場の雰囲気に流されて、まさに「裸の王様」の寓話の通りになってしまうのです。

(構成=伊藤達也)
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