夏場はぬかるみと雑草の中で作業

「カラマツは扱いやすいのですが、トドマツは松脂(やに)が多いので、作業着がベトベトになります。あと、カエデやシナ、ナラやセンといった広葉樹は見分けるのが難しくて、時々間違ってしまいますね。ベテランの方は断面や木肌の特徴、皮の匂いでわかるんですが、まだコツがつかめなくて……」

林業の伐採の本格シーズンは、木が成長を止め、水を吸い上げない冬だ。北海道の寒さは厳しいが、冬季に伐採されたもののほうが品質が良く、また、路面が凍結しているため大型トラックによる運材もしやすい。一方、6月から9月の夏季は作業の過酷さが増していく。雨、虫、雑草、足元のぬかるみが作業を妨げるためだ。

(上)切り出された丸太をサイズ別に分け帳面に記録する「受け入れ」作業。(下)先輩、後輩とともに3人で現場作業にあたる細島さん。仕事終わりに居酒屋に飲みに行くこともあるという。

「ついこの間までは結構、雪も残っていましたが、それがなくなったと思ったら草が一気に伸びてきて、山菜もあっという間に大きくなってしまって――。いまは苗木の植え付けが一段落した時期で、そうこうしているうちに夏の草刈りが始まります。1年を通して四季を感じられる仕事ですね」

三井物産フォレストは、北海道から九州まで74カ所にある三井物産の社有林の整備、管理を行う会社だ。彼女が入社したのは2013年。京都府立大学の森林科学科で学び、木材生産の現場に興味を抱いたのが、林業の会社を志望した理由だった。

細島さんは長野県松本市で育ったという。なぜ京都の大学に進んだのかを尋ねると、「四方八方を山に囲まれていたので、外の世界を見てみたかったんです」と笑う。

松本市は工芸が盛んな街でもあり、中高生の頃から木工の工芸品が好きだった。学校帰りにクラフトショップをのぞくのが日課で、森林科学科を専攻したのは「もっと木のことを知りたい」と思ったからだった。

「手芸は今でも趣味で続けているんです。先日は鹿の角を現場で拾ったので、輪切りにしてくりぬき、磨いてアクセサリーを作ってみたんですよ」

入社して初めて配属されたのは、同じ北海道の帯広山林事務所だった。林業の現場で働く女性はまだ少なく、どの地域に配属されても男職場である。だが、たまたま同事務所には三浦史織さんという先輩がいた。「女性が1人いるというだけで、とても安心しました」と細島さんは振り返る。