なぜ早稲田大や法政大は2000名以上も合格者を減らしたか?

大学付属校人気にはもうひとつ理由がある。

文部科学省は2016年度より私立大学において入学定員の超過による「私立大学等経常費補助金」の不交付の基準を厳しくしている。簡単に言うと、大学入試で合格者を「出しすぎてはいけない」という指示である。これを受けて、早稲田大学や法政大学がそれぞれ前年比で2000名以上、明治大学、青山学院大学、立教大学、専修大学などは1000名以上も一般入試合格者数をしぼりこんでいる。

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その結果、上位の私立大学入試が全体的に難化し、多くの高校の大学合格実績は前年よりふるわないものになってしまっているのだ。

ある中堅私立中高の入試広報担当者はため息をつく。

「『早慶上理MARCH』の実績がガタ落ちした、と受験生保護者から不安視されてしまっています。しかし、これはわたしたちだけではない。ほかの学校だって似たような状況なのです」

▼私大上位校の難化で、付属校人気に火がついた

複数の大学受験予備校で世界史を担当、現在は映像授業を提供する「学びエイド」で活躍する鈴木悠介氏は「定員超過の厳格化の影響は現場でも感じます。とりわけ早慶の合格が難しくなったと思います」と言い、こう続ける。

「ある予備校関係者から聞いたのですが、2017年度は高卒(浪人生)クラスの受講者がぐんと増えたそうです。それだけ大学入試で苦戦を強いられた受験生が続出したということでしょうね」

この私立大学の「定員超過厳格化」は当初はあまり世間で話題にのぼることはなかった。しかし、子が中学受験を志す保護者が多くの学校の説明会に足を運び、そこで合格実績低下の原因としてこの制度の詳細と影響の大きさを耳にすることで、「昨今の大学入試は厳しくなっているらしい」という空気がじわじわと広がってきているのだろう。その結果、子の進学候補として大学付属校に目を向けるようになった保護者が増えたと考えられる。