和子さんは海外旅行だったら今のうちしかないと考えているが、夫と絶対一緒に行かないので、女友達の同伴者を探している。しかし、なかなか同伴者が見つからないので、まだ念願のヨーロッパ旅行ができていない。一緒に旅に出る人を欲しがっている。

和子さんはワインやチーズが大好きで、女友達とおいしい店で満喫するのも趣味の一つ。お店探しは、食べログをフル活用して、綿密な調査を行う。そして、友達との連絡も多いので、寝ても覚めてもスマホをいじっている。まるでいまどきの若者のようだ。

スマホ中毒にワイン好きで、とても若々しい感じがある和子さんだが、本人も、私は若作りをしているし、自信があると言う。なので、社会でもっと年齢差別をなくしてほしいと願う。「年齢制限をなくしてほしい」というのは、とても大きなインサイトだ。シニアには、年齢を配慮したと強調する商品より、彼らをターゲットしたものでもすべての年齢層に受けるというコンセプトを提供したほうがいいかもしれない。

将来への「なんとなく不安」を解消したい

では、このペルソナから何が読み取れるだろうか。

まず言えることは、夫の有無、家族との関係性は70代のシニア女性の生活や生きがいに大きく影響を与えていることである。今を楽しむわがままマダム、そして別行動の自由夫婦、それぞれのインサイトもあれば、共通ニーズも見える。

共通のニーズとしては、健康意識が非常に高いことがわかる。また、今は元気でいいが、将来への「なんとなく不安」を解消したいという気持ちが見て取れる。これに対しては、相談サービス、同じ気持ちを持つ人をつなぐネットワークなどのサービスが考えられる。そして、年齢のことを考え、無理をしたくなくなるため、家事を楽にしたい気持ちも強い。家電、生活用品、家事代行サービスなどにビジネス機会があるだろう。また、旅行に行きたいが、同伴者がいないというのも共通の悩みである。

それぞれのインサイトをみてみよう。わがままマダムは、例えば、手抜きできる健康を配慮した食品が望んでいる。自由夫婦は、とにかく夫と健康を維持したいので、例えば、未病改善サービス、病気兆候の判断と処置セミナーや関連商品などが欲しがっている。健康だからこその自由なので、このようなビジネスは、学歴や健康に関するリテラシーがますます高くなる、今後の70代市場では、将来性があるだろう。

以上の分析のように、単なる70代をひとくくりすることでなく、定量・定性情報に基づき、企業独自の軸でセグメンテーションし、ペルソナを作成し、そして個別に戦略を立てることは、今後シニア市場を開拓する上で大きなカギを握っているといえる。

劉 瀟瀟(りゅう・しょうしょう)
三菱総合研究所 研究員。中国北京市生まれ。外交学院卒。みずほ銀行(中国)に入行し、その後東京大学大学院修士課程修了、三菱総合研究所入社。専門は日中の消費市場動向。中国人の深層意識のきめ細かい理解とともに、日本人の価値観・意識・行動を研究。最近は、インバウンド・越境EC等の中国マーケット動向や、生活者予測システムmifを用いて、日本消費市場を研究。著書に『女性市場攻略法―生活者市場予測が示す広がる消費、縮む消費―』(日本経済新聞出版社)などがある。