欧米のコピーではない、日本スタイルのビール作りとは

海外でビジネスをするようになり、木内酒造ではあることに気づいたという。日本の大手ビールメーカーは欧米のビールに近づこうと努力しているが、海外のマーケットでは日本オリジナルのビールが求められていたのだ。

「常陸野ネストビールは、欧米で売れているビールのコピーであってはいけないと思いました。そこで、国産原料にこだわった日本スタイルのビール作りが始まりました」(木内さん)

(左)赤米を使用した、レッドライス・エール(右)茨城産の福来みかんを使用した、だいだいビール

例えば「Red Rice Ale(レッドライス・エール)」は、日本の古代米である赤米を使用したビール。淡い薄紅の色合いと果物を思わせる香りが特徴の、日本独自のテイストが、海外でも評判だ。

また、日本ならではのクラフトビールを実現するため、昭和30年代で栽培が終了していた日本の原種麦「金子ゴールデン」の生産を復活させ、生まれたのが「Nipponia(ニッポニア)」というビールだ。

さらに、みかんの古来種である茨城産の「福来みかん」を使用した「DaiDai Ale(だいだいエール)」や、香りのアクセントにユズを使用した「Saison du Japan(セゾン・ドゥ・ジャポン)」など、国産原料や日本の歴史にこだわった商品を展開している。

「日本の茨城という地域にある、私たち木内酒造がビールを造る意味を追求しました。オリジナリティーを極めていって、自分たちのスタイルに作り上げていったことが、海外の人からユニークだと評価いただけた理由だと思います」(木内さん)

キャッチーなロゴも、世界進出を視野に入れて作った

常陸野ネストのトレードマーク、フクロウのロゴ。

一目で覚えやすいフクロウのロゴも、世界進出を視野に入れて作ったものだ。だが最初は、本社がある鴻巣(こうのす)という地名からとった「コウノトリ」をモチーフにするという案も候補に挙がっていた。しかし調べてみると、コウノトリはヨーロッパでは泥棒の鳥というイメージがあるということで、世界中の誰もが知っているフクロウが採用された。

結果的に、この時の判断は間違っていなかった。覚えやすいキャッチーなロゴのおかげで、常陸野ネストビールは世界中で「フクロウのビール」と呼ばれるようになった。

素材や商品のパッケージなど、商品開発の段階から海外展開を見据えたこれらの戦略が功を奏し、常陸野ネストビールはニューヨークで人気に火がつき全米で認知されるようになった。2016年、木内酒造はアメリカに約450キロリットル(約136万本)を出荷した。現在、輸出先はアメリカをはじめ33カ国以上に広がっている。