2017年はパルミジャーニ・フルリエにとって飛躍の年となった。ブランドの原点に立ち返った新作は好評を得て、時計づくりを超える挑戦的な未来型クルマ時計の発表でこのブランドのクリエーティブ能力の高さを示した。次のステップはどこへ? 新CCO、スティーブ・アムステュッツ氏の話を交えて、このブランドの過去・現在・未来をレポートする。

パルミジャーニ・フルリエの真髄、クラシシズムへの回帰

歴史的なクロックやオートマタ(機械人形)、あるいは懐中時計のコンプリケーション*などの修復で名を成したミシェル・パルミジャーニが自分の名を冠したブランド、「パルミジャーニ・フルリエ」を立ち上げたのが1996年のこと。その時、ブランドの旗印として発表したのが「トリック」と名付けられたクラシックテイストの腕時計だった。

*コンプリケーション…複雑時計もしくは複雑機構のこと

ベゼルのゴドロン装飾やモルタージュ装飾、ダイヤルのパミエ模様のギヨシェ彫り、カボション付きのリュウズなど、クラシシズムの装飾技法全開で、ミシェルの美意識を余すところなく表現していた。そもそもトリックというモデル名からして古代ギリシャ建築における柱礎(toric)のこと。クラシシズムの旗印としてこれ以上のシンボルはない第1号モデルだった。

そして早20年が経ち2016年のアニバーサリーイヤーを契機に、今年、ブランドの原点にいま一度立ち返ってブランドの本質を宣明するかのように、オリジナルモデルをモディファイして製作した3針モデルを発表。それが「トリック クロノメーター」である。半年後にはトリック・シリーズ第2弾、分単位での時差合わせが可能なGMT時計「トリック エミスフェール レトログラード」を発表する。

(左)ブランドの創業者にしてプレジデント、ミシェル・パルミジャーニ氏。1950年、スイスのクヴェ生まれ。76年アンティーク時計の修復工房をクヴェに開設。修復不可能といわれたブレゲの同調時計を修復するなど天才的な修復師として名を上げる。80年、スイス医薬品企業グループにかかわるサンド・ファミリー財団が持つ懐中時計とオートマタの一大コレクションの修復師となる。96年、同財団の長であるピエール・ランドルト氏の支援でパルミジャーニ・フルリエを創設。
(右)「トリック クロノメーター」。ブランドの初モデル「トリック」をモディファイした2017年の新作。日付表示付きの3針モデル。ゴドロン装飾、モルタージュ装飾のケース、エレガントな槍形針などオリジナルのディテールを踏襲して、このブランドのポリシーであるシンプルでクラシックなニュアンスを堅持している。●18KWG。ケース径40.8mm。自動巻き。エルメス製アリゲーター・ストラップ。184万円。

「ブランドのよって立つ基盤をクラシシズムに置くことは間違ってはいませんでした。予想以上の反響にディストリビューションが追いつかず、計画数の倍に増産を掛けたところです」と話すのは、パルミジャーニ・フルリエのバイスプレジデント兼チーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)のスティーブ・アムステュッツ氏だ。「クラフトマンの技能を正当に、高く評価するコネッスール(目利き)の多い日本では、ことに歓迎されました。この時計のクラシシズムもパルミジャーニらしさが戻ってきたと好評です」。