アサヒビールに2期目の女性総合職として入社した千林紀子さんは、今年、子会社のカルピスウェルネスの社長に就任した。アサヒ時代の代表的な仕事は「アサヒ黒生」の開発。だが、「とんがっている、生意気な女」と周囲から評価され、悩むこともあった。50歳を迎えたいま、これまでのキャリアを振り返る――。

「言い出しっぺ精神」でキャリアを築いていった

千林紀子さんが社長を務めるアサヒカルピスウェルネスは、カルピスが2012年にアサヒグループに加わった後、グループ内の3つの事業を分割して16年に生まれた。その事業とは、健康食品の通販事業、サプリメント会社に原料を納める機能性素材事業、飼料類を販売する飼料事業。会社設立のきっかけは千林さんの提案だった。

アサヒカルピスウェルネス代表取締役社長 千林紀子●1967年、神奈川県生まれ。90年、早稲田大学第一文学部卒業後、アサヒビール入社。営業、商品開発、宣伝、M&A担当など、さまざまな部署、職種を経験してきた。2015年にカルピスに出向し、17年より現職。

「当時、私のミッションは通販事業を成長させること。買収も含めて検討する中、よくよくグループ内を見るとカルピスの健康食品通販事業がありました。規模は小さいけれど、他社が手掛けていない良質のサプリメントを持っている。そこで、乳酸菌、酵母、微生物とコア技術が共通する2つの事業も合わせ別会社をつくり投資したらどうかと提案したのです」

上司から「言い出しっぺなんだから、自分でやれ」と言われた。この「言い出しっぺ精神」が千林さんのキャリアを決めてきた。

千林さんがアサヒビールに入社したのは、同社が女性の事務系総合職を採用し始めて2年目。最初の配属は大阪支社の営業だった。当時、業界で女性営業は極めてまれ。営業に回ると「女性で本当に大丈夫なの?」と言われた。

「とにかく頻繁に通い男性のダイナミックな営業とは違う女性らしい気配りの営業を心がけました」

大阪支店の気風もよかった。

「女性もドンとやれと、市場をまるっと任されました」

しかし中には、口も利いてくれない酒販店の社長もいる。千林さんは、社長が新しい取引先を開拓する先々に付いて回って、信頼を勝ち取っていった。