創業者個人の人となりも非常に大切

私が最初にベンチャー企業に投資したのが、京都市にあるソフト開発会社の「NOTA」でした。知人の紹介で社長の洛西一周さんと出会い、彼の仲間と飲み会をしたのがきっかけです。日本では未発売のiPhoneをポケットから取り出し、当たり前のように使いこなす彼らの姿を見て私はとても驚きました。

基本的に私が投資するのは起業して間もないアーリーステージの会社で、判断基準は候補会社のテクノロジーやプロダクトのレベルや将来性。優れた技術を有し、皆が使うような製品やサービスを出しているところが成功する確率は高くなる。私はDeNAでシステムとサービス開発を統括していましたから、ウェブやシステム、アプリなりのクオリティの評価はできます。NOTAの場合、データの共有システムのレベルの高さと将来性を評価しました。

創業者個人の人となりも非常に大切な要件になります。ただし、投資先の経営者に限れば、世の中の役に立つプロダクトを作れる人は人間的にも魅力があります。ですから、テクノロジーを重視することで、結果的には人物を見ているわけです。

よく、フェイスブックなどSNSを通して直接売り込んでくる会社がありますが、ややリスキーです。それなりに成長してVCが資本参加するようになった会社でも、そこからIPO(新規株式公開)できるのは10社に1社あるかないかなのです。時間の制約もあって、直接の売り込みには対応していません。

その点、投資先の経営者たちが、有望なアーリーステージの会社を紹介してくれることが多くなり、助かっています。私が信用し、実績を上げつつある経営者の目によってスクリーニングがかけられていれば、ヒットする率は上がってきます。

ただし、そうした有望な投資先は他の投資家も鵜の目鷹の目で探していて、売り手市場になっているのが現状です。そのため、いい案件は獲り合いで、起業家サイドも「どうコミットしてくれるのか」といった条件を当たり前のように出してきます。