上から目線の外国人をビビらせる方法

しかし外国人といってもいろいろいます。金融系の外資系企業では、大体米国人か英国人のいずれかがトップに就いているので、私はそれぞれ対処法を変えていました。砕いて言うと“たらしこみ方”を使い分けていたのです。

まず米国人は、金融に関する知識や実績はすさまじい半面、教養的な面でコンプレックスを持っている人が多い。籠絡するなら、相手の弱みを突くのが鉄則です。古典文学を引用したり、クラシック音楽やアートなどの話をしたりすることで、「こいつはすごいな」と思わせることができるのです。

逆に、英国人は教養やリベラルアーツに関しては徹底的に学んでいるので、付け焼き刃の知識を披露すると墓穴を掘ることにもなりかねません。しかし、英国人はなぜか数学に弱い人が多いのです。あのアイザック・ニュートンを生んだ国なのに、不思議ですよね(笑)。

だから、ちょっとした説明をするときにも、意図的に総和記号のシグマや積分のインテグラルなどを用いて、数式を使って話をする。そうすると、彼らは「こいつ天才か」というような顔でこちらを見てきます。

欧米人は基本的に日本人に対して上から見てくるので、最初になめられたら終わりです。第一印象でいかに「こいつ違うな」と思わせられるかが大切なのです。

かくいう私も金融業界から引退し、現在は作家として生計を立てています。最初に『疑獄 小説・帝人事件』という本を書いたときは、雑誌での連載スタートから単行本になるまで約2年かかったのですが、その印税はMD時代の年収の約2日分。2年かけて2日分かとさすがに愕然としましたが、昨年には当時の1割ぐらいは稼げるようになりました。これもまた人生の妙味というものでしょうか。

作家●藤原 敬之(ふじわら・のりゆき)
一橋大学法学部卒。農林中央金庫、野村投資顧問、クレディ・スイス、日興アセットなどで資産運用業務に携わる。累計で5000億円を運用してきた。
その後、波多野聖のペンネームで、小説『銭の戦争』シリーズなどを執筆。
本名での著作に『日本人はなぜ株で損するのか?』がある。
 
(構成=衣谷 康 撮影=岡村隆広)
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