無理して郊外に買うのはハイリスク

仮にこの予測が現実になったとしても、すべての物件が押し並べて6割減になるわけではない。例えば、国交省では首都圏沿線別に人口の動態予測をしている。それによると田園都市線、京王線、東横線、埼玉高速線沿線は35年まで人口増が見込め、高齢化の影響が小さいとされている。

また、人口が減って高齢者の比率が増えると、商業施設や医療福祉施設はある程度固まっていたほうが暮らしやすい。国も「立地適正化計画」でコンパクトなまちづくりを推進しており、多くの自治体が重点的に公共サービスを提供するエリアとそうでないエリアを区別する方針だ。

例えば、主要駅に近い高層マンションなどは利便性が高いうえに、将来も公共サービスが手厚く物件価値が維持されやすい。逆に、人口減の著しい沿線や郊外の物件は資産価値の目減りが大きいと予想できる。

前者のような物件であれば持ち家派が有利、後者のような物件なら無理して買わず賃貸にしておくのが賢明、という判定ができるかもしれない。もちろん、そのまま住み続けるのであれば、物件の評価額がいくら下がろうとも関係はないのだが。

ただし、これまでの議論と別に「圧倒的に賃貸派でいたほうがいい」ケースがある。親が評価額の高い場所に持ち家を所有しており、将来それを相続することになる人(特に1人っ子)だ。

というのも、相続人(※)が相続開始時前3年間持ち家に住んだことがなければ、相続税の「小規模宅地等の特例」(家なき子特例)により、評価額8割引きの相続税で受け継ぐことができるからだ。

※編集部注:初出にて「被相続人」と誤って表記していました。正しくは「相続人」です。訂正します。(2017年1月23日追記)

これはつまり、物件を8割引きで購入できる権利と同じだから、受けないのは損だ(相続後に売却しても貸してもよい)。該当する人は賃貸でいることをお勧めする。

Answer:立地次第だが住み続けるなら持ち家派に軍配

田中 歩(たなか・あゆみ)
不動産コンサルタント。旧三菱信託銀行で不動産売買・活用・ファイナンス等の業務に17年間従事の後、独立。現在はさくら事務所執行役員、あゆみリアルティーサービス代表取締役。
 
(構成・文=渡辺一朗)
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