トヨタも戦略の見直しを迫られる

トヨタ自動車は、かつてプリウスの組み立て工場を中国で設立し、日本米国などでの成功を目指したが、思うような成果をあげることができず、2015年に中国での生産を中止した。トヨタは電気自動車の生産技術を持っていないわけではなく、ハイブリッド車を今後の新エネルギー車へ移行する中間的な存在にしているため、中国ではトヨタのEVに対する熱意はあまり感じられなかった。

新エネルギー車促進政策のもとで、トヨタは燃料電池車を中国で販売できるが、水素を供給するためのインフラがほんどなく、これでは売れるはずはない。ガソリン車の販売を拡大しようとすれば、それなりに新エネルギー車の販売量も増やさなければならない。フォルクスワーゲンなどのように中国で大々的にEVを生産していくという方針を固めているようには見えないが、いずれはトヨタも中国で電気自動車の生産を開始せざるを得ないだろう。

日系企業もガソリン車時代の出遅れを教訓にして、中国市場に目を向けて動き出している。ホンダ自動車は2018年に中国で新型のEVを製造する計画である。また、トヨタ自動車も中国でプラグイン・ハイブリッド車を製造する計画である。

2016年にトヨタは中国で120万台販売した。新エネルギー車ポイント比率が導入されてから、販売台数が120万台と変わらなければ、18年に9.6万ポイント、19年に12万ポイント、20年に14.4万ポイントをそれぞれ確保しなければならない。中国市場で新エネルギー車を生産販売しない場合、他社からポイントを購入しなければならないこととなる。

米国カリフォルニア州が実施している新エネ・ポイントを例にとってみると、1ポイントは5000米ドルに相当する。中国では1ポイントがいくらになるか不明であるが、もし米国同様で計算すると、18年の9.6万ポイントは、およそ4.8億ドルのコストまたは罰金に相当する。「乗用車企業燃料消費・新エネルギーポイント管理辧法」の影響は大きい。

トヨタ自動車は11月18日、2020年に中国で量産型のEVを発売すると発表した。トヨタが量産型のEVを本格投入するのは、中国市場が世界で初めてである。世界最大の市場を有する中国政府政策が、トヨタに戦略の見直しを迫ったと言える。果たして今回は、欧米企業に追いつけるのだろうか。

(写真=Imaginechina/アフロ)
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