「貧乏人の子沢山」説は完全な誤りだった

ここでさらに、家族計画が完了していると考えられる(今後子供は作る予定はないと推測できる)、「15歳以上の子供が最低でも1人以上いる」世帯で切り取って世帯所得と子供の数を見てみると次のようになります。

ポイントを整理しましょう。

●「所得400万円未満」の世帯で一人っ子比率が70%以上となっています。
●子供2人の世帯は所得が大きくなるにつれて増えいき、ピークは「所得1250万円~1499万円」となっています。
●子供が3人以上いる世帯の割合は、「所得500万円以上の世帯」が10%を超え、その割合は世帯所得の増加に伴って最大14%に達します。

これらの結果、読者の男性の仮説を検証すると、「貧乏人の子沢山」は実際にはあてはまらず、所得の高い世帯ほど子沢山率が高く、所得が低い世帯ほど1人しか持つ余力がないというのが現代の日本の現状を表していると言えそうです。

▼所得と子供の数の関係を巡る学説

所得と子供の数の関係については、「出生力の経済学」として経済学的な観点からいろいろな説明がなされています。代表的なものを挙げてみます。

1)質と量のトレードオフ関係

ノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・スタイン・ベッカーは、夫婦は子供を何人生むかを子供一人にかかるコストを考えた上で決定するという質・量モデルという意思決定の問題だと考えました。

家庭の所得が上がると、「良い子供に育てたい」という子供の質に対する欲求・需要は高まる。そのぶん教育費などの養育にかけるコストが増大するため、量(子供の数)に対する需要が低下するというものです。「質と量のトレードオフ関係」によって、所得が上がると子供の数が少なくなることを説明していますが、前述したように、日本においては、所得が上がると子供の数は多くなっているので、このベッカーの理論だけでは説明がつきません。

ただ、子供にかけるコストに関しては、高所得層ほどかけるというのは事実でしょう。逆に、テレビで放映される大家族モノの低所得世帯と思われる家庭は、子供を大学に入れたり、海外留学させたりという子供へ教育的な投資をするシーンをほとんど見たことがありません。「質」についての投資が少ない分、子供を産み・育てることにあまり躊躇がないのかもしれません。