「セクター別方式」実現のプロセスはなぜ不透明なのか

以上の2産業の事例からも明らかなように、セクター別アプローチに対しては、CO2排出量削減の切り札として、高い期待を寄せることができる。ただし、セクター別アプローチに関しては、それをどのように実行に移していくかという点で、問題が残ることも事実である。この点については、セクター別アプローチを支持する立場をとる澤昭裕東京大学教授も、「セクター別アプローチには弱点もある。その名前のとおりセクター別に合意していくため、国連の場ではなく、別の交渉の場を用意しなければならない。交渉プロセスや方式が京都議定書タイプに比べて複雑化するのが弱点だ」(『ジェトロセンサー』08年7月号5ページ)と述べている。

もちろん、この点について、まったく手が打たれていないわけではない。すでに、世界のCO2排出量の過半を占める7カ国(日本・アメリカ・中国・インド・カナダ・韓国・オーストラリア)が参加する「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)が05年にスタートし、セクター別アプローチの具体化を進めている。ただし、国連条約をふまえて開催される気候変動枠組条約締約国会議(COP。京都議定書は、このCOPの第3回会合で採択された)に比べると、セクター別アプローチの国際交渉の場が整っていないことは、否定できない。

地球温暖化防止に有効ではあるが、実現のプロセスが不透明なセクター別アプローチ……我々は、それが今後、どのように展開していくか注目する必要がある。

(平良 徹=図版作成)