「イノベーション立国」としてのイスラエルに世界が注目している。もちろん日本からも熱い視線が注がれているが、そのはるか先をいくのが中国だ。昨年、日本からの対イスラエル投資は222億円だったが、中国からの投資は2兆円規模に達する勢いだった。中国がケタ違いの投資を進める理由とは――。

米国NASDAQの国別上場企業数は世界2位

最近、日本でイスラエル関連のビジネスニュースが熱いことはご存じだろうか? 今年5月には経産省とイスラエル国経済産業省の間で日イスラエルイノベーションパートナーシップの立ち上げが決定され、サイバーセキュリティ分野や産業R&Dでの相互協力がうたわれはじめた。

エルサレム旧市街と黄金に輝く岩のドーム

今月の動きだけでも、11月2日には三菱UFJキャピタルが同国のベンチャーキャピタル(VC)「ヴィオラ・ベンチャーズ」の投資ファンドに500万ドル(約5億7000万円)の出資を発表したほか、同13日には田辺三菱製薬がイスラエルの医療ベンチャー「ニューロダーム」をおよそ1200億円で買収したことが明らかになった。さらに11月末にはイスラエル大使館や同国革新庁が後援するビジネスサミットが、DMMをスポンサーとして六本木で開かれる予定である。

日本側の熱視線の理由は、国民一人あたりの起業率・VC投資額・R&D費(対GDP比)・特許数などが世界でトップクラスにある、近年のイスラエルのイノベーション立国ぶりが高く評価されているためだ。かつてはテロや紛争のイメージも強かった国だが、イスラエルは小国ゆえにイノベーション分野での生き残りを国策として進めており、近年は特にIT・医療・農業などの分野でユニークなアイデアが注目されている。米国NASDAQへの国別上場企業数も、外国企業としてはイスラエルが2番目である。

中国の対イスラエル投資額は2兆円規模に

失敗を恐れずフロンティア精神の強いユダヤ人の気質や、アメリカとの政治・経済上の密接な関係と高い英語力、世界に広がるユダヤ・ネットワークなど、近年のイスラエルのイノベーションを支える要因は数多い。軍のハイテクエリート部隊であるタルピオットや8200部隊に勤務した元サイバー兵士が、除隊後に兵役時の知識や人脈を活かして起業する例も多々見られる。

日本銀行の「国際収支統計」によると、2016年の日本の対イスラエル投資額は222億円に達し、15年の52億円から4倍以上という大幅な伸びを見せた。だが、実は日本企業の動きは遅きに失した感すらある。中国の投資はそれ以上の規模で増え続けているからだ。トムソン・ロイターの報道によると、2016年の中国企業の対イスラエル投資額は約1兆8000億円(165億ドル)で、前年から10倍以上に増えているという。

さらに今年になってからは、トランプ政権のもとで保護貿易主義や国防の観点から中国企業の米国企業買収に大きな制限が掛けられるようになったため、従来は米国に向いていた中国の投資マネーがよりいっそうイスラエルに流れ込むようになった。投資額のさらなる伸びが確実視されている。

本記事では、経済のみならず政治的にも結びつきを強めつつある両国の新たな関係を見ていくことにしよう。