「高級時計の現在」を探る本連載。初回は、2016年5月にシチズン時計の傘下に入ったスイス・ジュネーブの時計会社、フレデリック・コンスタント グループだ。30年近く独立性を保ってきた会社がなぜ大手資本を受け入れたのか。複数グループから買収の打診があったというが、なぜシチズン時計を選んだのか。来日したトップに聞く。

着実に進むシチズン時計の世界戦略

時計業界にはいくつかのグループがある。ブレゲ、オメガなどを擁するスウォッチ グループ、カルティエを中核としてヴァシュロン・コンスタンタンやIWC、A.ランゲ&ゾーネが属するリシュモン グループ、ルイ・ヴィトンを筆頭にウブロ、タグ・ホイヤーなどを傘下に持つLVMH グループなどである。それぞれに共通するのは、手ごろな価格帯から高額品まで幅広い価格帯のブランドをそろえ、どんな層の顧客にも訴求できる体制を整えている点である。

こうした巨大グループは、スイスをはじめ欧州やアメリカを拠点とするものがほとんどだが、じつは日本にもグループ化を目指す会社がある。それがシチズン時計(以下シチズン)だ。シチズンと聞くと国産時計を扱う会社と思う人が多いかもしれないが、この10年ほどは海外のブランドやグループの買収を進め、グローバルな時計グループへの基盤を固めつつある。2008年に、かつて音叉時計で世界に名を知らしめたアメリカ・ブローバ社を買収。12年にはアーノルド&サン、アンジェラスという高級時計2ブランドと、ムーブメント製造会社であるラ・ジュー・ペレを所有するスイスの時計会社、プロサーホールディングを傘下に収めている。

そして2016年、またしてもシチズンが動いた。スイスの時計会社、フレデリック・コンスタント グループの買収を発表したのである。同グループは、フレデリック・コンスタント、アルピナ、アトリエ・デモナコ(2017年現在、日本では未展開)という3ブランドから成り、それらすべてがシチズンの傘下に入った。

買収の狙いは明らかだ。シチズンが主力商品とするクオーツ時計は低価格帯のものが多く、一部の限定品や特別モデルを除けば、高くてもせいぜい30万円ほど。一方、これまでに買収した海外ブランドの大半は機械式時計を主力とし、価格帯は数十万円から1000万円を超えるものまである。スイス勢の存在感が大きい機械式時計や高価格帯の市場で知名度を高めるのが狙いと見ていい。

では、一方のフレデリック・コンスタント グループはなぜシチズンを選んだのか。世界を見渡せばほかに時計グループはいくつもあるにもかかわらずだ。同グループの社長でありフレデリック・コンスタントのブランドトップも兼務するピーター・C・スタース氏に聞いた。