一方、言葉で到達点やイメージを共有しようと思っても、上手く伝わらないことは多い。たとえ意味的には正しい言葉を使ったところで、1つの言葉が受け手によっていろんな意味に変換され、齟齬が生じることもあります。

伊東屋 社長 伊藤 明氏

この前も、今年の4月末に成田空港にオープンした新店舗を説明する資料に、「愚直にアナログに」と書かれていたので、資料の担当者に「愚直」はいらないと注意しました。本人は「ザ・日本の文房具」という新店舗のコンセプトを言い表すために、「真面目に取り組んでいる」という意味で「愚直」を使ったようです。でも私にとっての「愚直」は、「愚か」という言葉にあるように、「前に進んでいない」マイナスの意味に感じられました。

書く行為が思考を塗り替えることもあります。意外に面白いのが、書きなぐってみると思ってもなかった発見があることです。書き間違えた言葉から新しい考え方を学ぶこともあるし、自分の勘違いで書いたメモが結果的に学びになることもあります。

たとえば先日、2020年の東京オリンピックに向けて本店がある東京・銀座の街のイベントをどう変えていくかという話し合いがありました。ミーティングにはコンサルタントも参加していて、私はその人が提示した資料のなかに「大銀座まつり復活」というフレーズを見つけました。