(1)建物を主人公にする「物語」がある

歴史ある建築物のイメージをそのまま残したことで、建物を主人公にすることができました。それに加えて何といっても「宮原眼科」という名前を残したことが素晴らしいアイデアです。

眼科なのにスイーツショップというギャップが多くの人の興味をひきたてます。「世界一美しい眼科」とか「宮原眼科でアイスクリームを食べました」などとついSNSに投稿したくなります。それだけで話題になりやすい言葉なのです。

宮原眼科の様子(筆者撮影)

店名に日本人の名前がついていますが、それは戦前からの歴史を感じるものですし、基本的に親日である台湾ではマイナスにはなりません。

外観はできるだけ古い建物のイメージを残しつつ、中に入った時のゴージャスさとのギャップが痺れます。それでいて元の建物へのリスペクトがあちらこちらに感じられます。3階には、宮原眼科の歴史を解説したり宮原医師のプロフィールを説明したりするパネルもありました。お店のロゴは、病院の赤十字に白梅を重ねたもの。台湾では、日本=梅というイメージがあるらしく、元々の建物の主である宮原医師に敬意を払ったものだといいます。

このように建物自体に物語があると、施設全体の価値が高まります。

(2)お客さんを主人公にする「物語」がある

メインショップの店内は、ついつい写真に撮りたくなるような空間です。

建物内は撮影オッケー。実際、多くのお客さんは、観光客気分で写真を撮影しまくっていました。

お客さんにとっては、写真に撮って自由にSNSに投稿できる訳ですから、自分が物語の主人公になれます。

お願いすれば従業員もたぶん一緒に写ってくれるでしょう。従業員はとても愛想よくちょっと目が合うと、微笑み話しかけてこようとします。それでいて無理に商品を買わせようという雰囲気はありません。

名物のアイスクリームも、組み合わせが無数にでき、自分だけのオリジナルアイスがつくれるので、SNS映えがしやすくなっています。

2階のカフェでは、日本人だとわかるとフラッペに日本の国旗(昔のお子さまランチのような)をたててきてくれました。

これは、ちょっと気恥ずかしかったですが、うれしい人にはうれしいでしょう。

このように、宮原眼科は店に行くだけでも、お客さんは物語の主人公になれるのです。

お客さんにとって「自分が主人公になれる」場所が支持されないわけがありません。