企業は利益を追求する存在だといわれる。だが「『必要以上の利益』はいらない」と明言する企業がある。世界49カ国で930店以上を展開するイギリス発のコスメブランド「ラッシュ(LUSH)」は、意図的に上場を避け、社会貢献など利益にならない活動に熱心に取り組んでいる。その狙いを英国本社の経営幹部に聞いた――。
ショップには、パッケージのない固形のバス用品「ネイキッド」シリーズとボトル入り商品が一緒に並ぶ。(写真提供=LUSH JAPAN)

パッケージを必要としない「裸」の商品

「あなたにとって、そのパッケージは本当に必要ですか?」

イギリス発のコスメティックブランド、「ラッシュ(LUSH)」が今、商品を通じて消費者にこう問いかけている。

同社の2017年のクリスマスシーズンのテーマは「ネイキッド・クリスマス」。店頭にはカラフルなボトルが並んでいるようにみえるが、よくみると石鹸のようにボディソープやボディローションを固めたものだ。一連の商品はパッケージを必要としないため、同社では「ネイキッド」と呼んでいる。

ラッシュは創業以来、ゴミの削減を続けてきた。「ブラックポット」と呼ばれる商品容器は100%リサイクルプラスチックを使用しており、全店舗で容器回収も行っている。またビニールにみえる袋は、土に還る生分解フィルムだ。イギリスでソープの量り売りを始めた1995年から、ネイキッド商品の販売を開始しており、パッケージを必要としない「裸」の商品は同社のアイコンのようなアイテムだった。クリスマスのキャンペーンは、こうした取り組みを改めて強く打ち出したものだ。

店頭にはネイキッド商品だけでなく、その隣にはボトル入りの商品も並んでいる。つまり、買う側はどちらでも好きに選ぶことができる。選択肢を設けることで、ゴミの削減について消費者に考えてもらう、というのが、キャンペーンの趣旨だ。

重いメッセージを楽しく伝える

クリスマスにはプレゼント需要が増える。カラフルでユニークな商品が多いラッシュにとっては非常に重要なシーズン。リピーターだけでなく、初めてラッシュを訪れるお客さんに、ラッシュのポリシーを伝えるのにうってつけ。そのため、シーズン商品の8割をネイキッド商品で埋め尽くし、メッセージをクリアに表現した。

ラッシュは意志をハッキリと示す企業だ。今年、10周年を迎えた「チャリティポット」というハンド&ボディローションの商品は、社会問題に取り組む小さな草の根団体やプロジェクトへの寄付を目的としたもので、これまで日本国内では508の団体、プロジェクトに総額5億2000万円の寄附を行っている。

昨年は、インターネットへのアクセスを遮断する国などへの抗議として、「エラー404」というバスボムを発売した。これは浴槽に入れるとゴールドのラメがキラキラ光る入浴剤で、湯にとけると「インターネット遮断に立ち向かう#KeepItOn」というメッセージが浮かび上がってくる。重いメッセージを楽しさでくるんで伝えるのがラッシュ流だ。