日本を健康にする「とっておきの仕掛け」

ウェルネコは参加企業対象の健康アンケート実施や、1カ月に1度程度開く、お互いの取り組み状況などを話し合う情報交換会、さらには健康を気遣う渋谷の飲食店を紹介するアプリ「ウェルメシ」の開発を行ってきた。

アンケートは、健康経営を進めるうえで自社の立ち位置を知る材料となる。自社内でアンケートしても他社と比べて健康度が高いのか低いのかわからない。ウェルネコのアンケートで、健康に関心がある人は87%と高いのに、健康だと思っている人は54%と落ちる。さらに睡眠で十分休養が取れている人は27%。それに比べて自社はどうかと比較することができ、KPI(重要業績評価指標)作成のヒントになる。

50社以上の企業に健康経営のヒアリングをしてきた結果、平井は上手くいく企業の共通点は「明確な数値目標」の設定にあると捉えていた。

「KPIを作成してゴールを設定すれば、健康経営を経営に資する(貢献する)取り組みとして位置づけることができる。この『明確な数値目標』に加え、『成果の見える化』『現場目線』の3つが健康経営を企業文化に根付かせるためには必要です」(平井)

こうして平井が渋谷の企業を巻き込みながら大きくしてきた健康への取り組みが、いままたさらに広がろうとしている。今年8月30日に一般社団法人日本健康企業推進者協会(JWCLA)を設立。関係者へのプレ講義などを経て、11月中旬より自社の社員に健康を普及させる「健康企業指導員」の育成を目的にした研修をスタートさせる。

「『渋谷』で蓄えたナレッジを体系化し、プログラムとして渋谷の外にも公開していけば、日本全体が健康になっていきます」(同)

ウェルネコによる今後のプロジェクトとしては、来春に東急電鉄発のウォークビズのイベントの開催も計画される。さらに平井はその先を見据える。

「渋谷駅からヒカリエに続く通路に電光掲示板があります。いまは液晶に広告などが映りますが、1、2年後にはその前を通る人の歩く姿を映したい」

永らく温めていたこの企画の実現に向けても日々奔走し、そこで会う人々に想いを伝え続ける。

「健康経営を進めていくと数年後には、歩く姿勢や健康状態がこんなに変わるんだと証明したい。そうすれば日本中の自治体が健康経営に興味を持ち、もっともっと大きなうねりを起こせるはずですから」(同)(文中敬称略)

▼すぐに使える! 健康になる歩き方

悪い歩き方の典型は、頭が少し前に出て、膝が緩み、腰が引けた姿勢です。一方、よい歩き方は腰が入った姿勢。母指球(足裏の親指付け根のふくらみ)と膝と腰の位置が一直線になるような姿勢を保ち、胸を張り、右、左、右と、踏み出したほうの足に全体重をかけて歩きましょう。目線が上がり、呼吸量も増えて脳に酸素が回りやすくなるので、気分も爽快です。

よい歩き方を身につけるためには、ちょっとしたレッスンがあります。即効性があるのが踵歩き。膝の緩みがとれて、下半身の動きがスムーズになり、疲れづらくなる。もう1つは後ろ歩き。自然と首が伸びて頭の位置が高くなるので、見た目もよくなります。(平井)