私は現役時代から記者クラブの閉鎖性、なれ合い、取材対象との距離感のなさを批判してきた。記者クラブは言論の自由を否定する存在だとさえ考えている。

記者クラブ制度を解体すべきである

メディアの重要な役割は権力を監視することである。だが、第二次安倍政権のあたりから、記者だけではなく、メディアのトップたちまでもが、安倍晋三首相に誘われれば喜々として従い、酒食を共にすることをおかしいとは思わなくなってきた。安倍はそれをいいことに、メディアを選別し、歯向かうメディアは排除し、露骨に攻撃することを平然と行うようになった。

そうした権力側の驕りの象徴が菅の会見といってもいいだろう。それを一人の記者が、疑問に思っていることを納得するまで聞くという、至極まっとうなやり方で挑み、風穴を開けたのである。これを機に、記者クラブ制度を解体すべきである。なにはともあれ、望月記者の話を聞いてみたいと連絡を取った。

銀座の喫茶室に現れた彼女は小柄だが、ブン屋さんには珍しい華のある女性だった。2児の母親で、亭主は同業者だが、単身赴任中だという。

2004年に日歯連(日本歯科医師連盟)が自民党の首脳たちに迂回献金をしていたことが発覚した。その献金リストを彼女がスクープして、大きな話題になった。

「正義のヒーローでも、反権力記者でもない」

初っぱなから失礼な質問をしてみた。私のような雑誌屋は、記者クラブ制度やなれ合い会見を批判してきた。あなたのようにまっとうな質問をぶつけて、これだけ話題になるというのは、何も変わらなかったということが証明されたのだと思うが。彼女はこう答えた。

「私のしたことは当然のことでもてはやされることではないと思う。それだけ今は、権力に対してモノがいえない、ジャーナリズムの限界が見えてしまっているからなのではないか」
「いろいろなメディアが、自分たちでやればいいのに、私のしたことを取り上げて、その結果に自分たちは責任を取らない」
「私は正義のヒーローでもないし、反権力記者でもない」

深刻ぶった表情ではない。どちらかというと、あっけらかんとしたいい方である。私は、さらに質問を重ねた。

小池百合子東京都知事から「排除する」という発言を引き出したのはフリージャーナリストの横田一だった。いまはどこでも権力ベッタリで、権力者の意のままに動く記者が多い。そうした中で、どう切り込んで発言を引き出すかが勝負になる。あなたが引き出した菅の「ここ(会見)は質問をする場ではない」というのも、大暴言だったと思う――。

彼女はうなずき、こう答えた。