「要領がいい」という言葉がある。一般には「無駄がなく、手際がよい」という意味と「表面だけはいいように見せかけ、実際には手を抜く」といった、どちらかというと少し悪い意味に使われることもある。

しかし、このようにも解釈できる。要領がよいとは、要と領がよい、と。これは人間の体で要は腰、領は首筋を意味し、腰から首筋までがきちっと伸びている、すなわち姿勢のよさを意味するのである。これは人間がやる気になったときの姿勢でアスリートを見ているとよく理解できる。フィギュアスケートの浅田真央選手がミスなく演技を終えて「やったー」とポーズを決めたときのすーっと伸びた姿勢や、水泳の北島康介選手がスタート台に立ったときの「さあ、これから」というときの姿勢を想像していただきたい。

心と体は表裏一体、失敗して落ち込んでいるときは、人間は姿勢が崩れ、自然とうつむいてしまう。そんなときは元気も出ないし、人にもよい印象を与えない。身だしなみと同様、健康でいて、よい姿勢を保つことは相手に信頼感とよい印象を与える。これこそ、体の中から発するノンバーバル・コミュニケーションである。

私は後輩や新人たちに「サービス業は年間365日、24時間営業だから欠勤はない」と常々伝えてきた。「欠勤」という文字が自分の頭の中にあると、体の具合が悪くなったり、休むようになる。だから「欠勤」という言葉を頭から消してしまい、「あなたの代わりはいないんですよ」と口をすっぱくして言うようにしている。そのようなプロ意識を持てるか否かが重要である。どんな仕事でも楽な仕事はなく、自分の控え選手がいる仕事は少ない。

どんな仕事でも全員が一軍のレギュラー選手である。その選手が1人でも欠ければ戦力ダウンしてしまい、仕事の質は低下する。一人ひとりが「トンボの眼」と「ダンボの耳」を養って誰にも負けないマインドを持つことが非常に大切なのである。

(中島 恵=構成)