専門性だけの人は外国では認められない

【三宅】学校教育でも、小学生だからここまで、中学生になったから必須単語はこれだけというのは、教える側が勝手に制限しているわけですね。実際、小学6年生で英検一級に合格する生徒はいます。いくらでも伸ばしてあげたらいいのです。

ところで、アメリカでは高校や大学でディベートやネゴシエーションなどを通してロジカルシンキングについて学ぶわけです。日本では論理よりもどうしても情緒という風潮があります。もちろん、情緒教育は必要なのですが、論理も身につけていかないと、世界には太刀打ちできません。

【杉田】日本人はロジックの大切さを学校で学んできません。親しくなった外国人ビジネスマンと話をしていると、そう感じている人が多く、「日本人は本当にロジカルに物を考えられない国民なんだね」と残念そうに話します。そこは、これからの日本の教育の大きな課題かもしれません。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』(三宅義和著・プレジデント社刊)

【三宅】確かにロジカルシンキングは大切です。それがないと、なかなか世界に羽ばたける子どもたちも出て来ないでしょう。杉田さんはグローバル企業の経験も豊富で、経営者という立場も踏まえて、これからの人材像・会社像をどのようにイメージしていますか。

【杉田】むずかしい質問ですよね。論理と感情にも関係があるけれど、ユーモアを理解する力、人間としての厚みとか温かみも必要です。そういったものを持たないと、どんなに素晴らしい専門性があったとしても、外国では認められません。

ちなみに、「実践ビジネス英語」のテキストの舞台は、ある意味で私の理想的な会社で、そこのカルチャーはLove and Profit、「愛と利益」です。社員にも顧客にも、そして、地域社会にも優しさを持って接していく。けれど、利益はきちんと出していくということですね。

アメリカでは、16年前の9.11の同時多発テロ以降、こうしたミッションを掲げる企業が増えてきています。愛と利益をどうやって実現していくかという、一見すると相反しているように見えることを多くのトップが考える時代になってきました。

【三宅】私も常にそのことを考え続けてきました。社員が伸び伸びと働き、その結果として顧客にも満足していただける会社にしたい。と同時に適正利益は確保しなければ永続はできません。それを両立させられるのがグローバル人材であり、グローバル企業だと言うことなのでしょう。本日はありがとうございました。

(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)
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