2009年4月6日(月)

頂点のサービスをつくる「トンボの眼、ダンボの耳」

PRESIDENT 2007年12月31日号

著者
蔵田 理 くらた・おさむ
元ホテルオークラ宿泊部副部長、サービスコンサルタント

1953年生まれ。東京YMCA国際ホテル専門学校を卒業後、ホテルオークラ入社。18年にわたり玄関、ロビーを担当するサービスマンのスペシャリストとして勤務。ホテルマン生活30年間で約3000人の新人指導の実績をもつ、接客のカリスマ。著書に『上客がつくサービスつかないサービス』がある。

元ホテルオークラ宿泊部副部長/サービスコンサルタント 蔵田 理=談 中島 恵=構成
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「マニュアルを超えたその人だけへのサービス」を顧客に提供するには、どんな心構えが必要なのだろうか。「接客のカリスマ」と呼ばれる元ホテルマンが、長年の経験をもとに、感性を磨き顧客の心を捉える方法をお伝えする。

マニュアルを超えた「紙一重上のサービス」とは

お客さまに満足してもらうために最も大切なことは、お客さまを観察する「トンボの眼」と、お客さまの声を聞きとることができる「ダンボの耳」を養い、サービスマインドを磨くことである。

ホテルのベルマンは、玄関で誰よりも先にお客さまを目にする。その瞬間に「トンボの眼」で観察すれば、お客さまが重い荷物を持っていないか、足をひきずってはいないか、一番にお客さまの視覚情報を得ることができる。また、情報をキャッチする「ダンボの耳」を持つことで、何気ない一言を聞き漏らさずサービスに生かすことができる。

たとえば、客室係が廊下を歩いていたときに、お客さまが「いやぁ、昨日空調の効きがあまりよくなくてさ、寒かったな」と、ほかのお客さまと話していた会話が偶然聞こえてきた。そこですぐに「あ、空調が壊れたんじゃないかな」と思いチェックしてみると、確かに温度が上がり切っていなかった。ここできちんと直しておけば、翌日は正常な空調を提供することができる。

お客さまが直接自分に言ってきたことでなくても、お客さま同士の会話を聞き漏らさずにキャッチしたことで、空調の具合をすばやく直し、そのお客さまは快適に過ごすことができた。もしかしたら、そのままにしていても、お客さまは「たいしたことじゃないから」と思い、わざわざクレームとして言わなかったかもしれない。しかし、もし、会話を聞き漏らしていたら、翌日も空調は壊れたままで、結局お客さまは体調を崩してしまい、苦情となって跳ね返ってくるかもしれないのである。

私が30年間勤めたホテルオークラでは「紙一重上のサービス」を提供するべく取り組んでいる。それはちょっとした言葉遣いであったり、お客さまに提供する情報であったりする。それぞれのお客さまをよく観察して「今、この人が求めているものはこういうことかな」と情報を探りながら接客することで、お客さまの気持ちや状態を知り、満足していただける。



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