では、働いていない人との比較ではどうか。図表2は、幸福度(「とても幸せ~とても不幸」)をまとめたものである。幸せを感じている人の割合は、65歳以上では、正規の職員・従業員57.8%、非就業50.2%であり、高齢で働くことは、非就業と比べて、決して悪いものではなさそうである。

こうしてみると、高齢で働けることが、生き生きと活躍する機会の獲得や幸福感の増進につながると期待できる。さらにいえば、65歳までの雇用が現実化している中では、65歳以降の就業をも視野に入れた検討を進める時期に来ているといえよう。では、その検討にあたり、現在顕在化している課題として、以下の3つを指摘したい。

課題(1)高齢者の職種には偏りがある

高齢者の就業形態は、年齢とともに、非正社員(パート・アルバイト等)や自営業の割合が高くなるが、その職種はどうなっているのか。図表3をみると、高齢者の職種は、管理職・専門職、現業職に偏っている。また、男女別でみると、男性は、建築施工管理・現場監督・工事監理者、女性は、看護師、塾講師、保育士の割合が高いという特徴がある。高齢者の体力に対する配慮や高齢者だからこそ求められる経験ももちろんあるが、それらに固定化されることなく、保有する経験・能力に見合って、従事できる職域をより広く開発することが望まれている。

課題(2)定年など制度的な理由で離職している

そもそもなぜ離職するのだろうか。2016年に離職して、現在働いていない60歳以上の未就業者の離職理由(複数回答)をみてみると、定年が最も多く(30.9%)、次いで、契約期間の満了(15.4%)となっている。つまり、就業継続か引退かの決定が、本人の仕事意識や技量にもとづく判断ではなく、制度的な理由によっている現状がある(図表4)。