高給や魅力的な労働条件より、優秀な部下の心を動かすのは、自らのキャリア開発だ。エースを他社に奪われないための防衛策を紹介する。

優秀な社員にとって昇給や勤務地より魅力的な条件とは

ヘッドハンターが一流人材を引き抜くとき、最も有効な方法は、高額の給与やよりよい条件、勤務地を示すことではない。もっと魅力的なもの──彼らのキャリアプランについて語ることなのだ。

デロイト・コンサルティングで人材育成を担当していたジェフ・サマーは、手痛い経験をしている。デロイトの有能な社員が転職時に、ヘッドハンターは誰よりも「私のキャリアについて話をしてくれた」と言ったのだ。

デロイトはこの状況を正すため、キャリア開発に焦点を当てたコーチングを開始した。「社員たちと、最終的なキャリア目標について定期的に話し合いたいと考えたのだ。友人と1杯やりながら会話するような感じでね」と、サマーは語る。デロイトの諸部門のうち、このプログラムを採用している部門は、離職率が他部門より著しく低いという。

社員維持の専門家で、『Love'Em or Lose 'Em: Getting Good People to Stay』 (日本語版『部下を愛しますか? それとも失いますか?』)の共著者、ビバリー・カイエは、社員が転職より今の会社に残りたいと考える理由のトップ20を調べた。トップはキャリア開発の機会で、昇給より重視されていた。「キャリアについての話し合いを怠ったら、優秀な人材を失うことになりかねない」と、彼女は言う。

すべての企業がデロイトのような方式を取る余裕があるわけではないだろう。だが、キャリアパスを描く手助けをすることは、どの管理職にもできることだ。キャリア目標をしっかり聞いて、部下を大切にする上司であることをわかってもらいたいと思っている管理職のために、専門家からのアドバイスを紹介する。