課題克服の視点を「地球全体の環境」に移した

マツダの経営は、現在、2016年4月に始まり19年3月に終わる3年間の「構造改革ステージ2」のちょうど中間地点にある。そのなかで今年8月、新たに「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を提示した。その背景には、今回の次世代エンジンと、今年9月に発表したトヨタ、デンソーとの電気自動車の技術提携があることは間違いない。

最近、電動化すればクルマはコモディティー化する、という議論が盛んに聞かれるようになった。しかし、トヨタもマツダもデンソーも、電動化したクルマがコモディティー化するとは考えていないようだ。むしろ電動化が進めば、従来以上に付加価値で競えるようになる。そしてマツダの場合、電動化での付加価値の基盤が、高効率の内燃機関になると考えているようだ。

マツダは「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の中で、クルマにまつわる環境問題を単なる技術開発の課題ではなく、「『地球』の課題」として俯瞰的に捉える姿勢を示した。そこでは2030年までに、「Well-to-Wheel(燃料採掘から車両走行まで)」でのCO2排出量を2010年比で50%削減することを目指している。

これはマツダ車の排出するCO2の総量を、燃焼によって生じるCO2だけではなく、化石燃料の採掘現場から車輪を回すまでに生じるCO2に総合的にとらえるというものだ。ちなみにマツダは今年4月までの1年間、2020年までにマツダ生産の乗用車すべてにおいて、平均燃費を2008年比で50%向上させる、と説明していた。2008年とはスカイアクティブ技術の搭載をはじめた節目の年だ。

つまり、マツダは課題克服の視点を「マツダ車」から「地球全体の環境」に移したわけだ。これは将来投入する電気自動車を強く意識した結果だろう。なぜなら、電気自動車は走行時には排気ガスを出さないが、電気を供給する課程では相当のCO2を排出するからだ。

マツダはこれまでも水素ロータリーの試作車をつくり、デミオEVを生産・リース、またアクセラのハイブリッド車を製品化するなど、クルマの環境性能を追求してきている。とはいえ、ここにきて、政策面、技術開発面両方での急激な世界的な“電動化”への対応に拍車をかけてきた。

マツダの小飼雅道社長は、今年8月、「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を発表するにあたり、「世の中が求める環境性能の要求に対して、“マルチソリューション”で応える」と語っている。今回の試乗会でも、同じ趣旨の発言が聞かれた。