S氏によれば、「90年代にカンボジアに進出した大手商社の第一世代には、現在の中国や韓国勢に負けず劣らず、現地に食い込んでいく日本人ビジネスマンも少なくなかった」という。しかしここ数年では「その手の働き手がめっきり減った」のだそうだ。

「現在、60~70歳代になる元日系企業駐在員の現役時代の話を聞くと、接待や賄賂は当たり前で、いくつかプロジェクトに失敗しても、大きな商談を決めさえすればチャラになるという風潮があったようです。きっと、時代的な違いもあるのでしょう。それでも、結果を出すということにこだわるスタンスは必要。それが失われてしまえば、今後も海外勢に負け続けるしかありません」(前出、S氏)

リスクをおそれて中韓企業に負ける

そのような意見に対して、カンボジア青年であるダリット氏も半ば同意する。中国・韓国企業と日本企業の違いを尋ねたところ、ダリット氏は短くこう話した。

「日本のビジネスマンはリスクを取ることを極端に嫌がっているように見えます。例えば、何もない原野の土地が2倍になると予想されているとして、中国など海外企業はリスクがあっても目をつぶって買う。一方、日本の企業はリスクが下がるまで待って商機に乗り遅れ、最終的には何もしないということが少なくありません」

猛烈なスピードで発展しつつも、まだまだ新興国特有の商習慣が残るカンボジア。その東南アジアのフロンティアで、日本企業はどう戦っていくべきか。本稿では「海外勢に負ける日本企業」について言及してきたが、実際にはカンボジア現地で成果をおさめている日本人ビジネスマンも少なくない。特に飲食や美容などサービス分野においては、現地の需要をくみ取り、着実にビジネスを前に進めている人たちも増え始めている。現地の声や状況にさらにアンテナを高め、戦い方を研ぎ澄ましていく必要があるのかもしれない。

河 鐘基(は・じょんぎ)
1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表取締役。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」(roboteer-tokyo.com)を運営。著書に『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社新書)、『ドローンの衝撃』(扶桑社新書)、『ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実』(光文社)。訳書に『ロッテ 際限なき成長の秘密』(実業之日本社)、『韓国人の癇癪 日本人の微笑み』(小学館)など。
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