若かりし頃の大失敗

羽物俊樹氏
羽物俊樹氏

コンサルタントになって、7~8年目くらいでしょうか。若手マネジャーだった頃の話です。その頃の私は、プロジェクトの目標に向かって、前に進めていくのが得意なマネジャーでした。表面化する課題をどんどんつぶしながら、ゴリゴリ前に進めていける。ある程度、自信も持っていました。「プロジェクトに問題が起こっても、多少のことなら何とかできる」と。

あるとき、新しいプロジェクトを担当することになりました。以前担当したことがあるクライアントと同じ業界で、全く同じような経営課題を解決することが目標と聞かされました。私は、こう考えました。

「業界も同じで、領域も同じ。どうすればいいか、自分はもうわかっている。以前のプロジェクトと同じように進めれば、うまくいくだろう」

そこで、あまり周囲と対話することなく、タスクを設定し、スケジュールを引き、前に進めようとしました。ところが、これが大失敗でした。

そもそもプロジェクトの目的があいまいで、ステークホルダーにより考えが違っていたのです。ステークホルダーはクライアントの中に複数いました。企画部長と営業部長とでは考えが違っていましたし、情報システム部長も違う。ステークホルダーにより思惑が異なれば、何をどの範囲で行うのか、プロジェクトのスコープは決まっていないのと同じです。

しかし若い私は「以前のプロジェクトと同じに進めればいいのだ」と思い込んでいたので、この状態を放置し、プロジェクトをどんどん前に進めようとしました。クライアントのステークホルダーたちと対話して合意形成することを怠り、代わりに担当者へのヒアリングは行う。でも、バラバラな状態で担当者にヒアリングを行っても、話がどんどん発散していくだけです。当然、プロジェクトは空回りする状態になってしまいました。

空回りすると、「何とかしなくては」と頑張る。労働時間も長くなる。でも、いくら時間をかけても、「そもそも」の部分を放置しつづければ、空回りがひどくなるばかりです。

結局、私はプロジェクトを外されてしまいました。