Diagnosis:7
ダメ上司のしわ寄せ

日本企業ではまだまだ「遅くまで残業している」ことを評価する管理職が多いことも事実です。実際、労働時間と人事考課の相関関係を見ると、労働時間の長い人のほうが、評価が高く、出世しているという統計もある。私もかつて、「クライアントには早朝か深夜にメールを送れ」と言われたことがあります。社内だけでなく、社外に対しても、長時間残業していることは“一生懸命仕事している”というアピールになるのです。

20代のころはしたくもない残業をしていました。当時の上司の指示があいまいで、何を、いつまで、どの程度やらなくてはいけないのか、求められている業務の到達点や全体像が不明確なことも少なくありませんでした。それでも、とにかく一生懸命にやろうとするわけですが、実際は簡単な調査で済むものや、もともと必要な仕事なのかどうかも怪しいこともありました。

そうしたダメ上司によるムダな残業を防ぐためには、期日とクオリティについての目標イメージをしっかり握ることが必要です。これは上司がやらなければいけない仕事ですが、やってくれない上司もいますよね。その場合は、下から突き上げるのが部下の責任というものです。

世の中には理不尽な上司もたくさんいます。たとえば「ゲーム市場の現状や課題について調べといて」というようなことを言っておきながら、いざ調べて報告すると「こんなに詳しくなくてもよかったのに」と言う。心が折れてしまいますよね。ですので、「この局面で求められるクオリティは何点なのか」を見極めて、出力を調整することが大切です。

常に全力投球していては、評価されないムダな仕事が発生しますし、ここぞというときに力を発揮することもできなくなってしまいますよ。(山口氏)

千葉大学文学部教授 一川 誠氏
大阪市立大学文学研究科後期博士課程修了。専門は実験心理学。人間が体験する時間や空間の特性、知覚、認知、感性の研究に従事。著書に『「時間の使い方」を科学する』など多数。
 

企業コンサルタント 山口 周氏
コーン・フェリー・ヘイグループ シニア・クライアント・パートナー。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て、現職。著書に『外資系コンサルの知的生産術』など多数。
 
(構成=嶺 竜一、衣谷 康)
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