私は「東大卒が多くなったから、この業界や講談社がダメになってきた」などというつもりは毛頭ない。私が知っている講談社の東大卒編集者は、みな優秀である。

法学部にいて、マンガがやりたくて入社したI。たぐいまれな語学力を生かして中国や北朝鮮問題を追いかけているK。数々の大ベストセラーマンガを世に出し、独立してマンガ家たちのエージェントをつくったSなど、逸材ぞろいである。

メーカーや銀行に入るのと同じ感覚

問題があるとすれば、東大生だけに限らないが、ここにいれば一生食いっぱぐれないという理由で、入社してきた者が多いことである。

私が面接官をやっていた終わりの頃から、講談社の他にどこを受けているのかと聞くと、「××銀行と××証券を受けています」と悪びれることもなく答える応募者が年々増えてきた。

編集者という仕事が特殊で難しいものだとは思わない。しかし、今も昔も変わらない3K職場である。昔ほどではないだろうが長時間労働や徹夜は常態になっている。女性も例外ではない。

それでも大手といわれるところはまだいい。中小には、帰りは毎晩終電車、土、日出勤、有給なしという典型的なブラック企業がいくつもある。それは、自転車操業を通り越して、今や「F1操業」といわれる出版界の構造的な欠陥が原因だが、ここでは省く。

こうした環境で生き抜き、出版の屋台骨を支えられるのは、エリート街道を歩んできた者ではないのではないか。もちろん、難関大学を出た中にもそういう人材がいることを否定はしないが、それを見抜く目が採用する側にあるのか、心配である。

私は、2001年に出した『編集者の学校』(講談社)にこう書いたことがある。

「適性も志もなく、メーカーや銀行に入るのと同じ感覚で出版社に入ってきて、馬齢を重ねるだけの編集者の多いことを憂えているのは私ばかりではないはずだ」

講談社の単行本編集者に聞いてみると、年10冊以上のノルマがあるという。まるで1人で月刊誌を作っているようなものである。