従来の教育システムでは可能性は育てられない

日本の学校は、「平均的に底上げ」と、大人から見た「年相応の学び」のために、「個別の可能性育て」を封印してきました。また、誰が採点しても不公平が出ないような○×式の回答を求めてきたために、正解のあるものをどれだけ正確に覚えるか、あるいはちょっとトリックのあるような問題だと、それをやはりいかに覚えるか、というところに注力してきました。それが受験勉強という形で、ある時代までは機能してきたのです。

『「天才」は学校で育たない』(汐見稔幸著・ポプラ新書刊)

今、日本の学校はどこまで機能しているでしょうか。

○×式で正解を求めていくことで、その分野で秀でた力を持った人材は見出すことができたかもしれませんが、まだ答えが見つかっていない問題、答えを自分たちでつくるしかない問題、みんなの意見を上手に束ねることが必要な問題に、答えられる力はどうでしょう。

世の中にないものを提案する力、しかも5年たったら大きく変化していくであろうこの時代のなかで、新たな提案をする力は、残念ながら従来の教育システムではまかないきれなくなっているのです。

 
汐見稔幸(しおみ・としゆき)
白梅学園大学学長、東京大学名誉教授。1947年、大阪府生まれ。東京大学教育学部卒、同大学院博士課程修了。専門は教育学、教育人間学、育児学。育児や保育を総合的な人間学と位置づけ、その総合化=学問化を自らの使命と考えている。主な著書に『小学生 生きる力を育てる』『本当は怖い小学一年生』など多数。近著に『「天才」は学校で育たない』(ポプラ新書)がある。
【関連記事】
藤井聡太四段密着「新幹線で号泣した日」
14歳で名門大学に入学! 天才少年のつくられ方
脳の8割が完成"5歳まで"にやるべきこと
頭がいい子の家は「ピザの食べ方」が違う
中高一貫校で「優等生」が優等生でなくなる理由