このほかにも混合介護の弾力化によって想定される課題や懸念は存在する。十分なメリットはあると考えられるが、その提供を円滑なものとするためには課題や懸念点を事前に整理し、十分に検討していくことが重要となる。現状、指摘されている課題・懸念点は定性的に語られているものも多いため、今後の検討においては、しっかりデータを収集・蓄積して分析することが重要だ。

混合介護×IoTで介護人材不足解消に貢献

 混合介護の柔軟化が進むことで介護サービスの利用者、利用者家族、事業者それぞれに一定のメリットがある。ただし、介護分野は財政の逼迫、サービスを供給する人材の不足など、多少の改善で解消できない問題を抱えており、革新的な成果を上げられる取り組みが求められる。そのうえでは、政府の「未来投資戦略2017」でも示されているように、最新の技術(ICT、AI、ロボット等)の活用による業界の変革に資するモデルの検討、その推進のための規制緩和などが重要になる。

例えば、訪問介護サービスとIoT技術を活用したサービスの組み合わせなどは大きな効果を発揮する可能性がある。

IoTによる見守りを行い、その情報を活用し支援が必要なタイミングで保険サービスを提供し、夜間の体調急変を察知した場合は保険外サービスとして駆けつけ・安否確認を実施する、といったような柔軟なサービスもあり得る。さらに、同じスタッフが両サービスに関与し一体的な運用ができれば、それぞれのサービスを別な人が実施するよりも情報共有や事務面の負担も抑制できるだろう。

現状、保険サービスはそれぞれ必要なスタッフ数の基準が定められているが、新技術の活用により基準を緩和することができれば、人材不足問題の解消に貢献できるはずである。サービス提供に必要なマンパワーが削減できれば、費用抑制にもつながる。

厚労省は2025年には介護人材が37.7万人不足すると推計している。今後も安定的に介護に係るサービスを継続していくためには、この人手不足問題を解決することは必須である。混合介護はこの人材不足問題の解決の一助になりうると筆者は考える。今後の議論では、この点も一つの視点として盛り込んでいくべきだろう。

福田隆士(ふくだ・たかし)
日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門シニアマネジャー
1980年生まれ。2005年早稲田大学大学院理工学研究科経営システム工学専攻修了後、株式会社日本総合研究所入社。介護業界やシニアビジネス、ヘルスケア領域をはじめ、組織活性化や従業員意識改革等に関するリサーチ・コンサルティング業務に従事。
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