「問いの偏り」を無視している

世論調査というのはおもしろいもので、質問の仕方次第で答えが変わってくる。

安倍政権に批判的な新聞社が行うと、答えも批判的になる。反対に安倍政権を擁護する新聞社だと、答えは擁護的になる。朝日新聞の場合、直近の世論調査では「安倍内閣を支持しますか」という項目だけでなく、「国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況は、よいことだと思いますか」「今後も、自民党を中心とした政権が続くのがよいと思いますか」と質問している。

朝日の論説委員は、こうした「問いの偏り」を無視して筆を進めているようだが、読み手はそこを割り引く必要がある。

次に朝日社説は「ならばなぜ、衆院選で自民党は多数を得たのか」と書き、その答えを「首相が狙った権力ゲームに権力ゲームで応える。民進党の前原誠司代表と希望の党の小池百合子代表の政略優先の姿勢が、最大の理由ではないか」と指摘する。少しばかり、抽象的ではあるが、そこがまた朝日新聞らいしいのかもしれない。

議員が「生き残り」に走るのは当然

朝日社説はさらに具体的にこう説明していく。

「小池氏の人気を当て込む民進党議員に、小池氏は『排除の論理』を持ち出し、政策的な『踏み絵』を迫った。それを受け、合流を求める議員たちは民進党が主張してきた政策を覆した。安全保障関連法の撤回や、同法を前提にした改憲への反対などである。基本政策の一貫性を捨ててまで、生き残りに走る議員たち。その姿に、多くの有権者が不信感を抱いたに違いない」

朝日社説のような意見は肯けないでもない。だが沙鴎一歩は以前書いたように「排除の論理」によって民進党内の保守派とリベラル派が分かれることで、選挙自体が分かりやすくなったと思う。

議員は落選すればただの人。当選してこそ、己の主張を社会に強く訴えることができる。だからこそ、小池人気にすがろうとしたのだろう。議員が生き残りへ必死になるのは当然のことだ。

「野党に舵取りを任せることはできない」

読売社説も大きな1本社説だ。タイトルが「衆院選自民大勝」で見出しが「信任踏まえて政策課題進めよ」「『驕り』排して丁寧な政権運営を」である。安倍政権を擁護してきた読売新聞にしては静かな見出しだ。

その書き出しも「安倍政権のすべてを支持するほどではない。だが、政治の安定を維持し、経済再生や日本の安全確保できちんと結果を出してほしい。それが、今回示された民意だろう」とバランスがとれている。