足りない1000万円は生活保護に頼る可能性大

仮に長男が障がい年金を受けられるようになったり、就労による収入が得られるようになったりすれば、不足額の1000万円が準備できるかもしれません。しかし、障害年金がもらえるかどうかは請求してみないとわかりません。就労できるようになるかどうかは今のところわかりません。

では、もし不足額が準備できない場合はどうなるのでしょうか?

残念ながら、この部分は生活保護制度に頼ることになるでしょう。生活扶助(生活費の援助)や医療扶助、住宅扶助(家賃の援助)を受けることで、生活していく可能性が高いと思われます。

「なんだ、結局、生活保護に頼るのか」と受け止める人がいるかもしれませんが、将来に向けて何も対策をしないわけではありません。精神疾患のある長男の場合、これから多くの収入を得ることは難しいかもしれません。よって、最大限切り詰めたうえで、足りないところを福祉でカバーすることに大きな問題はないはずです。

▼父「本当は長男の生活費を全額準備したいのですが……」

最後にIさんは下を向きながら申し訳なさそうに言いました。

「本当は長男の生活費の足りない分を全額準備したいのですが、やはり難しいですね。サバイバルプランに向けていろいろと提案をしていただいたのに、私たち家族がしっかりしておらず申し訳ございません」

確かにサバイバルプランは、子供の一生涯の生活費を準備していくことが目的のひとつです。でも、すべての家庭が全額準備できるわけではありません。そして、全額準備できないからといって、全てがおしまいというわけでもありません。

「仮に全額準備できなくても、将来に向けての準備を家族でできることからしていただくことが大切だと思います」。そう声をかけると、白髪の目立つ70歳のIさんは言いました。

「そう言っていただけると、家族としてもとても救われます。本当にどうもありがとうございました」

家族全員にやっと笑顔が見られました。