中道右寄りのポピュリズム

評価が難しいのが、希望の党です。評価を難しくしているのは、希望の党という政治的な動きそのものに着目するのか、小池さんという一人の個性に着目するのかによって異なるからです。政治的な動きの背景にあるのは、先進国各国で共通して進行している反エリートの気分です。既存の政党や政治家には、現代の難問は解決できないという感覚です。

イギリスのEU離脱や米国のトランプ政権誕生には、それぞれに背景や性質が異なるところはありますが、根っこにある感情には似たものがあります。各国で同時進行するポピュリズムに共通する要素は何か。それは、既存の政治家階級への不満であり、感情的に動員されやすい政策への反発であり、中間層の経済的な閉塞感でしょう。それらの要素の上に、中道右寄りの気分と、負のエネルギーを組み合わせた運動が生じているのです。

日本では、政策的な対立点は明確ではなく、反利権という雰囲気が突出しています。希望の党がPR動画の中で攻撃するのは、「しがらみ」、「組織の論理」、「隠ぺい体質」、「既得権」です。重視するのはあくまでもスタイル。今後、日本に移民問題のような国民を分断する感情的な論点が生じることがあれば、ポピュリズムが発するエネルギーは更に暴力的なものとなるでしょう。

利権に力を入れるのは改革を謳う政党の特徴です。過去、自民党が大きく負けたのはいずれも利権を衝かれたときなので、戦術的にも間違ってはいません。ただ、この戦略の盲点は、政権を獲得すると自らも利権化するという矛盾から逃れられないこと。一つの極を形成するだけの永続的な論点にはなり得ないのです。日本で、改革風味の政党群が生まれては消えていったのは、その本質と向き合ってこなかったからです。

小池氏という個性を超えた次なる焦点

小池氏という個性に着目するとどうでしょうか。悪目立ちするのは、政策の中身における圧倒的な準備不足でしょう。あれだけ、無茶苦茶な発言を繰り返すトランプ政権にさえ、それなりに一貫した政策的体系が存在します。賛成か否かとは別に、経済ナショナリズムを前面に出し、反移民・反貿易・反軍事介入を柱とする政策はそれなりに筋が通っています。

希望の党が打ち上げては萎んでいった一院制、ベーシック・インカム、内部留保課税などは、申し訳ないけれど俎上にすらのってこない代物です。組織運営の堅実さや、有為な人材の結集度合いという意味でも随分と貧弱な印象を持ちます。

選挙前からこのように申し上げるのは失礼かもしれませんが、希望の党が永続すると思っている向きは、本人たちも含めてないでしょう。ただ、各国の例を引くならば、小池さんの求心力が衰えた後にも、センターライト・ポピュリズムの存在感は増していく可能性が高い。

焦点は既に小池氏という個性を超えた展開に移っています。憲法改正、北朝鮮危機、社会保障改革など日本社会が直面する難しい論点において、日本政治にセンターライト・ポピュリズムという明確な存在が加わった影響がどう出てくるのか。試金石となるのは、まずは、憲法改正と北朝鮮問題における立ち位置。そして、経済分野の構造改革を自民党に突き付けるような動きを見せられるかどうか。

自公政権という政権の枠組みに変化が予想されない中、そのあたりが、日本政治の新たな焦点となっていくのではないでしょうか。

こうして政治について考えることは、リアルな世界を生き抜くうえで、欠かせない教養になっていると思います。書籍よりも早く、ニュースサイトよりも深く、いまの政治について考えていくため、この10月からメールマガジンをスタートしました。当面のテーマは「資本主義に政治はどう向き合えばいいのか」というものです。ぜひ、ごらんになっていただければと思います。

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