マッキンゼーの日本支社長をしていた80年代に大阪を拠点にしていたからよく知っているが、大阪は「自分の町をつくる」という発想と気合に乏しい。にぎにぎしくイベントを引っ張ってきては、公共工事にありつく。ゼネコンが強いこともあって、どうしてもイベント経済を志向しやすい。

一過性のイベントでは町づくりにはつながらない

万博だけでなく、その後の花博、関西国際空港建設などもその使い方、生かし方が不明なまま公共投資案件として予算獲得のお祭り騒ぎをしたにすぎない。大阪を都市化(アーバニゼーション)が進む世界の中でどのように位置づけていくのか、という長期ビジョンもまったく不在である。関西の政財界は世界の中で大阪の競争力をどう高めていくのか、世界中から優秀な人材や企業にどのようにしてきてもらうのか、に関しては興味も関心もないのだ。

一過性のイベントでは町づくりにはつながらない。私はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で公共政策論を教えていた。公共政策論の中心になるのはメガシティである。今、世界で繁栄している場所はすべてメガシティであり、メガシティ以外に繁栄しているところはない。

メガシティの特徴は何かといえば、毎日人がくる、企業がくる、情報がくる、お金がくるということだ。大阪市の人口は約270万人。人口規模では立派なメガシティだが、「毎日人がくる、企業がくる、情報がくる、お金がくる」というメガシティ繁栄の4要件は見事に欠けている。

外資系企業の日本本社といえば東京が一番多いが、それでも香港、シンガポールに比べれば富の流入は圧倒的に少ない。実は外資系企業を呼び込むには4種の神器が要る。

1つは「職住近接」。職場と居住地が近いことだ。外国人のビジネスマンは職住近接を重視する。ハイテク関連を主体とした産業が集まっている都市を「イノベーションシティ」という。最近は「イノベーション産業の乗数効果」(提唱者はカリフォルニア大学バークレー校の経済学者エンリコ・モレッティ氏)が言われていて、イノベーション系の仕事で雇用を1つつくると、その地域でサービス関連の新規雇用が5つ生まれるという。この乗数効果は製造業の倍以上だ。