防衛省側は特定の機体名を挙げずに、記者会見では「メーカーから『直ちに運用に影響はない』との回答を得ているが、(全容を)早急に確認したい」と述べた。しかし長年防衛省を取材してきた軍事専門家は「それで済む問題ではない」と憤る。その理由として「この2機は過去にとんでもない問題を起こしている」と息を荒らげる。

2機は開発段階で何度も強度不足の壁にあたり、その都度補強を繰り返してきた。既に述べたように、そのため開発が遅れていたのだという。まず、07年7月30日に防衛省が公表した内容によれば、地上での強度試験で、両機は水平尾翼が変形し、C‒2は主脚やその付近の胴体構造の一部が変形。P‒1は胴体の床構造の一部にひびが入り、両機体の設計が見直された。14年1月には地上試験でC‒2の機体強度を確認した際、後部の貨物扉が脱落した。これについて防衛省は「機体後部のフレーム強度不足が原因」としていた。

虚偽データを信じた可能性は

こうした問題はたび重なる補強による機体重量の増大と引き換えに解決していったが、なぜ、ここまで当初の想定と実際の強度が違ったのか。そもそもアルミ素材の強度に問題があったにもかかわらず、神戸製鋼が示した虚偽のデータを防衛省と川崎重工が信じた可能性はないのか。この点に関して、川崎重工は、本誌の取材に「個別の機体の詳細に関してはお答えできない」と回答している。

こうした疑惑はどういった影響があるのだろうか。繰り返すが防衛省側は「直ちに影響はない」といっている。しかし「これは大嘘だ」と前出の軍事専門家は語る。理由の一つに、北朝鮮危機を目前に自衛隊の運用に問題を起こしかねない点を指摘する。

「信用できない部品や構造材が使われているとわかれば、現場としては点検の強化や頻度を増やさざるをえないし、面倒な非破壊検査をやらざるをえない」