家庭の財産管理に関わり全体を把握しておく

さらに長期間の別居は、裁判所が夫婦関係が破綻しているとみなし、離婚が認められやすい。

「長年の別居は離婚理由の1つになり、その期間は、裁判官によって異なります。最近は3年から5年は必要だといわれています。結婚期間も関係するため、30年近く経っている熟年夫婦の場合は、比較的長期間別居していないと破綻しているとはいえない、と判断されることもあります」(原口氏)

「オレが稼いだカネだ」と考える夫のなかには、夫婦共有の財産を妻には渡したくないと、いろいろな手を打つ人がいる。岡野氏がこう説明する。

「離婚を切り出されると退職金を妻に黙って前借りして使い込んだり、持ち家を売却しようとした夫がいます。また、夫婦の口座はきっちり分け、給料が出たら別に用意した生活費のための口座に振り込んでいました。残りのお金はうまく妻の目から逃れ、隠し口座をつくって預金しておき、離婚裁判でも、その存在を決して認めないといったケースもあります。また、妻が離婚を考えていることを察して、愛人のもとに行ってしまい、別居の実績をつくろうとした夫もいます」

蓄積された財産の大きい熟年離婚は、「夫と妻の知恵比べ」といってもいいかもしれない。

老後の生活の虎の子である年金の分割は、夫の側からするととても理不尽な制度に思えるが、離婚分割の対象となるのは、結婚期間中の厚生年金のみだ。それも08年4月より前の分については、話し合いで50%までの間で決める。サラリーマンの妻で専業主婦が自動的に2分の1の権利を持つのはそれ以降の分で、男性にしてみれば「確実に半分取られる」わけではない。

とはいえ預貯金や自宅が半分に、そして年金は減額されて、仕事もない。パートナーのいない熟年離婚の定年後はうら寂しさが漂う。少なくとも損をしない熟年離婚にするためには、家庭の財産管理に積極的に関わり、全体を把握しておくことが重要だ。

▼離婚でトクする4つのポイント

【1】妻にばれないよう隠し口座をつくり、隠し財産を貯める
【2】夫婦の口座はきっちり分け、家庭の財産管理に積極的に関わり全体を把握する
【3】なるべく別居をする。別居中に築いた財産は分与の対象外。離婚もしやすい
【4】財産で捨てるものは割り切り、こじらせずに離婚でムダなエネルギーを使わない

吉田重信●行政書士
明和事務所代表。自身の経験も踏まえたノウハウを駆使し、男性向けの離婚、男女問題を手がける。著書に『プロが本音で書いた 男のための離婚の本』がある。
 

原口未緒●弁護士
未緒法律事務所。夫婦・離婚案件を主に扱い、相談件数は350件を超える。著書に『「この結婚もうムリ」と思ったら読む本 こじらせない離婚』がある。
岡野あつこ●離婚カウンセラー
夫婦や家族、特に離婚関係において3万件以上の相談実績がある。著書は『貴女が離婚を決める前にしなければならない8つのこと』など多数。
(写真=PIXTA)
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