朝日は「憲法論議」、読売は「憲法改正」

一方、改憲派の読売新聞の社説はどうだろうか。

10月14日付の読売社説(朝日と同じく大きな1本社説)の見出しは「憲法改正」「『国のあり方』広く論議したい」「自衛隊の位置付けへ理解深めよ」である。テーマ自体を「憲法論議」とする朝日社説と違って「憲法改正」としているところから、朝日と読売のスタンスが大きく違うことが分かる。

読売社説は前半で「自民党は公約に、(略)4項目の改正を目指す方針を明記した。抽象的な表現にとどめた前回衆院選と比べて大幅に踏み込んだ。政権党として、9条改正を主要公約に挙げたのは初めてである。高く評価したい」と書く。

9条改正の公約について「高く評価したい」と新聞の社説としては最高級の褒め言葉を贈っている点など、やはり安倍政権擁護の新聞社の体質がそのまま出ている。

読売も論旨展開は憲法の原則に基づく

読売社説はさらに「自衛隊の位置付けや緊急事態時の特例措置、政府と自治体の関係などは、国のあり方に関わる重要なテーマである」と指摘する。

そのうえで「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の3原則の堅持を前提に、大いに議論を深めてもらいたい」と主張する。この辺りは問題ないだろう。

朝日と反対のスタンスを取る改憲派の読売も「国民主権、人権の尊重…の憲法の原則」との言葉を使ってその論を展開しようとする。いつものことだが、読売と朝日を読み比べていると、頭の中が混乱することがある。

「自衛隊合憲」には一応の理解を示すが……

読売社説は「自衛隊の合憲」に理解を示したうえで、自衛隊の位置づけを次のように言及しながら、巧みに改憲論を主張していく。

「政府は長年、自衛隊は9条2項が保持を禁止する『戦力』ではなく、合憲とする憲法解釈を維持してきた。大多数の国民も、自衛隊の国防や災害派遣、国際協力活動を高く評価している」

「合憲」ならば改憲する必要はないだろうと読み進めると、読売社説は筆を反対方向に運ぶ。

「だが、自衛隊の存在は、70年以上、一度も改正されたことのない憲法と現実の乖離の象徴だ」

沙鴎一歩は「一度も改正されない」ことがそんなに問題なのか、と思うが、どうだろうか。