「君との議論は実に楽しかった」

40代で支店長として現場を飛び回っていたころ、社内研修で当時会長だった小林陽太郎(故人)の講話を聴く機会がありました。一支店長にとって、会長は雲の上の人。しかし、私は質疑応答で手を挙げて、生意気にも自分の意見を会長にぶつけたのです。

周りからは身の程知らずだと叱られました。でも、10日後に小林から一通のレターが届きました。封を開くと、そこには直筆でこう書いてありました。

「ああいう議論は実に楽しいものだ。自分の考えを主張して戦わせないと、実のあるディスカッションにはならない。あの場で見せた精神を、ぜひ他のさまざまなところでも発揮してほしい」

失礼だったかと内心びくびくしていましたが、それどころか小林は細やかな心遣いで励ましてくれた。人と人が向き合うとはこういうことなのかと、本物のマナーを教えていただいた気がしましたね。この手紙は、私の宝物。今も大事に机にしまってあります。

▼栗原社長の作法
【1】年賀状はどうしているか(送付枚数)
仕事約600枚、プライベート約300枚。
【2】普段のお礼状はどうしているか
相手への想いを直筆で綴る。
【3】仕事絡みのゴルフはするか
週1回(ゴルフシーズンのみ)。
【4】日常の勤務時、ネクタイはするか
する。
【5】会食の回数
ほぼ毎日。社外週2~3回、社内週2~3回。
【6】服は誰が選ぶか
今は自分。社長になる前は妻。
【7】初対面の相手で見るところ
目の輝き。
栗原 博(くりはら・ひろし)
1953年、宮城県生まれ。78年学習院大学法学部卒業後、富士ゼロックス入社。2004年営業統括本部販売本部官公庁支社長、09年取締役常務執行役員、14年取締役専務執行役員を経て、15年6月より現職。
 
(構成=村上 敬 撮影=竹中祥平)
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