普及の鍵を握る「運用」の問題

こうした新しいカテゴリーの自動車が普及していくためには、運用をセットで考えていくことが大切です。人類が20世紀をかけて車中心で作りあげてきたインフラを本当にすべて作り変えるとすると、21世紀の100年をまるまる費やさなくてはならないでしょう。もっと変化のスピードを速めていくためには、すでにあるインフラをベースにして、その運用を工夫することが鍵になると僕は考えています。

たとえばイギリスの首都ロンドンでは「コンジェスチョン・チャージ(混雑課金)」という仕組みが採用されています。これはロンドン市内の渋滞を緩和するため、特定の時間帯に都心部に乗り入れる利用者には一定の金額を支払わせるというもので、実際に交通量は減っていると見られています。

こうした「ゾーン」で規制する考え方に加えて、高速道路・幹線道路のような「大動脈」と「生活道路」を切り分けて運用する方法もあります。そもそも道路とは「往来」、つまり人々が往ったり来たりする場所です。自動車以前の時代から、子どもたちの遊び場であり、大人たちの井戸端会議の社交場としての性格も併せ持った「生活道路」として機能してきたという面があります。

これはある大学の先生がおっしゃっていたことなのですが、幹線道路ではある程度は周囲のスピードに乗って走らなければならないので、ゆっくりと走りたい車には細くて狭い生活道路を主体に経路をナビするという「分走」の考え方も、現在の位置情報技術があれば十分可能です。

さらに、こうした時速15~30kmという速度帯の車が増えてくれば、今ある自動車と一緒に混走するのは難しいでしょう。時速15kmで普通の車線を走ってしまうと渋滞が起こり、周囲をイライラさせてしまいます。かといって歩行者に混じって歩道を走ることも決して安全ではありません。だとすると、将来的には、速度帯や車重に応じて、歩行者、自転車&超小型モビリティ、普通自動車という3つのレーンをきちんと整備するのがベストではないかと僕は考えています。仮にそのうち超小型モビリティのレーンの比率が高くなって、街中から普通車のレーンがなくなってしまったとしても、それはそれで面白い未来ではないかなと思います。

欧州で進む「低速専用」の免許制度

超小型モビリティの先進国といえるのが、ヨーロッパの国々です。街中の道が狭く入り組んでいるヨーロッパでは、歴史的にもミニカー(超小型車)が活躍してきた経緯もあり、こうした多様な車が人々に受け入れられやすい土壌があったのです。イタリアに行ったときは、街角で「なんだこれ!?」というようなミニカーをたくさん目にしたりもしました。ヨーロッパでは前述のコンジェスチョン・チャージを含めて、こうした小さな自動車が活躍できるよう、法整備がさまざまな形で進んでいます。

日本で超小型モビリティを導入する際には、原付(原動機付自転車)や小型特殊の免許でも運転できるようにするのもひとつの案ではないかと思っています。

ヨーロッパでは、こうした免許についての取り組みも進んでいます。2014年にフランスの法規が変更になり、最高速度が時速45km以下という限定つきで、小型四輪自動車を運転できる年齢が16歳から14歳に引き下げられました。