「違いを生み出す人材」を戦略と連動させる

「Aクラス人材」を社内の命運を握るようなプロジェクトに機動的に担当させているかどうかはなかなか表には出てこないものだ。実現に向けては、CEOがビジネスの命運を握るような職務を特定し、それを満足にこなせる人材の見極めを実施することが不可欠である。われわれの経験ではこうした人材は大企業においては100~150名程度が対象になる。

数字の根拠を挙げておく。CEOが直属の部下8名を抱えている会社を考えてみる。この8名のそれぞれの管理スパン(1名の上長が管理できる部下の人数)も8名前後とする。同様に次の階層も管理スパンは8名とすると、CEOの下3階層目の時点で社員はざっと600名に達する。5~7名に1名がAクラス人材、すなわち、違いを生み出せる人材とすると組織の上から3階層目で100~150名程度が対象となる。

これらの最も希少な人材、すなわち「違いを生み出せる人材」と中長期戦略を連動して考えなければ、中長期戦略が絵に描いた餅になりかねない。

多くの日本企業は、中長期戦略策定時に人材の中長期戦略を策定しても、せいぜい必要な人員数の話にとどまっている。経営資源の最適配分が経営の最大の仕事であるならば、最も希少な経営資源である「Talent(人材)」に関して、次のような人員の数を超えた「Aクラス人材の人員計画」がCEOの同席する場できっちりと議論されなければならない。

・全社の戦略・計画を達成するためには、どんな人材が、いつ、どのくらい必要なのか。
・社内の重要なプロジェクトを担わせたい「Aクラス人材」はどのくらい必要になるか。
・今の人材プールに対して、どんな人材を、いつまでにどのくらい増強する必要があるか。
・そのために、社内の人材、社外の人材について、どんなアクションが必要か。

日本企業は業務効率化を通じた生産性の向上に取り組んでいる。たとえば、人工知能(AI)による定型業務の置き換えは、あちこちで具体的な検討が進んでいるという話が聞かれ、「乗り遅れたらまずい」というムードが漂っている。

今後、労働力が不足していくなかで生産性を維持・向上させていくために業務効率化は不可欠だ。一方で、「違いを生み出せる人材」を最も適切な職務に配置し、オールスターチームを組成し、圧倒的な成果を生み出す「勝つための差別」という「攻めの生産性向上」も必要である。平等主義から脱却して、「Aクラス人材」を最大活用しなければ、組織生産力は高まっていかないのだ。

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