最初と最後に撮る集合写真への想い

ただ、経験者ほど抵抗が予想された。「まずは社員が見本を見せよう」。社員が率先して応援を始めると、その姿を見たパートの間から、「マネジャー、私も行きます」という声が次々挙がった。あるとき、1人のパートが渡辺にこんなことをいってきた。

「最近、1日があっという間に終わるんです。前の半分ぐらいに感じます」

以前は6時間かかった仕事が3時間ですむ。その分、ほかの仕事をサポートしてマルチに動く。それも“やらされる”のではなく自発的にだ。1日の密度が2倍になった充実感をそう表現したのだ。

坪効率についても生鮮食品売り場をあえてコンパクトにし、密度を高くする策をとった。前は1段しか置かなかった惣菜を3~4段積む。狭い売り場に客が集まり、人が人を呼んで商品の回転が格段に高まった。仕入れ改革も、8月末の開業が話題を呼び、新しい取引先のほうからアプローチしてくる動きも出てきた。四輪すべてが高回転した結果、業績は予想以上の伸びを見せ、売り上げ目標を早々に20%も上回った。

社員数の早期削減の目途もついた。が、中には「ヨーカドーに戻さないでほしい。今後もザ・プライスで仕事をしたい」と申し出る者も出てきた。赤いトレーナーのユニフォームを恥ずかしがったマネジャーも、「本社の会議にはこれを着ていきます」と胸を張るようになった。

以前は業績低迷で「このまま閉店になってしまうのでは」と沈んでいた同じメンバーが今は生き生きと働く。それがまた成果に結びつき、モチベーションを高める好循環が回り始めた。

「お客さんが来てくれる。こんなにありがたいことなのかと改めて知りました」

あるパートの言葉が渡辺の胸に響いた。本人が話す。

「みんなの顔つきが変わり、声が大きくなり、動きのスピードがものすごく速まった。わずか1カ月足らずです。その進化は鳥肌が立つほど感動的でした」