部下の混乱を受け止める寛大さを

さらに、部下の混乱を受け入れよう。変革プロセスのあいだは、社員はどの段階においてもまったく相反する感情を抱くことがあるという事実を受容するのだ。1人の人間のなかでさえ、長年続けてきたやり方を捨てる淋しさが、おそらく会社にとってより好ましい新たな方向に進む高揚感とせめぎ合うかもしれない。そのような感情の混乱は人間として正常なものであり、能力や価値が他の人たちより劣っているからではないということを社員に理解させようと、ダックはアドバイスする。

部下とつながりを持ち続けることも大切だ。ダックは言う。

「どれほど忙しかろうと、社員食堂で昼食をとり、社員の質問に答えて、彼らが変革にどう対処しているかを把握する時間をひねり出そう」。これは、抵抗がどこで生まれかけているかを、それが危険なレベルに達する前に見つけるのに役立つはずだ。

部下とのつながりやコミュニケーションを、指揮下のマネジャーの責務にしよう。ダックのクライアントだった会社のある上級マネジャーは、指揮下のマネジャーのボーナスの50%をコミュニケーションの有効性に基づいて決定していた。ここでいうコミュニケーションとは、変革プログラムに関する最新情報をどれくらい迅速かつ頻繁に部下に伝えているか、変革に必要な行動について部下がどれくらい理解しているか等の基準で評価されていた。

経済の上に垂れ込めた暗雲の向こうに明るい光を見るとしたら、それはわれわれが機会均等の状況にあることだとダックは指摘する。自らをつくり変える機会が、すべての企業に等しく与えられているのだ。

組織が必要とする変革構想によって引き起こされる感情の混乱を、部下がうまく乗り切れるよう手をさしのべることで、マネジャーは部下が成功実績を築く手助けをするのだ。その実績が将来の変革の際に部下たちを支えることができる。ダックが言うように、「自信とは成功の記憶」なのだから。

(翻訳=ディプロマット)