最後に残るのは世のため人のために尽くしたもの

私は、しばらく前に、臨済宗妙心寺派のお寺で頭を剃って得度をし、お坊さんの修行の真似事をさせていただいたのですが、そのときにしみじみ思ったのは、人生とは波瀾万丈、諸行無常であり、何一つ永遠に安定したものはない、一寸先は闇、何が起こるかわからないのだ、ということでした。

そのような諸行無常、波瀾万丈を生きる中で、たとえ経営者として成功したとしても、死んでいくときは地位も名誉も関係ありません。

稲盛和夫は、京セラをつくって、巨万の富を得たようだ。しかし、そういうことは、死の間際になってみれば何の価値もないのかもしれません。

その代わり、その人が生きた間に、世のため人のためにどのくらい尽くしたのかということは残るはずです。

世のため人のために尽くすということは、美しい心を持つということ。美しい心をもっているから、自分のことはさておき、人のために尽くすことができるのです。そう考えれば、人生というのは、美しい心をつくるためにあるのではないか、そのように私は思います。

つまり、人生で何が一番の勲章かというと、一生をかけてつくり上げた美しい心なのです。

では、心が美しくなる最大の方法とは何か。それは、私は「一生懸命働く」ことだと思います。学生であれば、「一生懸命勉強する」ことになります。

心は、「苦労」という磨き粉を使わなくては磨けません。

だから人生ではいろんな苦労をさせられる。人生波瀾万丈、災難にあったり、病気になったり、悪いことも起こります。

しかし、それらはすべて、心を磨くために自然が我々に与えた試練なのです。同時にラッキーも、そのまま幸運に溺れて人間性が堕落していかないかを見るために、自然が与えた試練と考えることができるでしょう。

それを、苦労に対して不平、不満をあげつらい、世を妬み、世を恨み、なんで自分だけがこんな目にあわなければならないのか、と拗ねていたのでは、心を磨けるわけもなく、かえって心が汚れていく。

今のこの試練は、それに耐えて一層頑張るようにという自然の教えなのだと受けとめ、苦しくても明るく生きていくのです。そうすることによって、すばらしい人間性というものが培われ、人生の勝利者となることができる。そのために、苦労をするということは大変大事なのです。

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