「一定額購入していただくと送料無料にしていましたが、もともと客単価が低めなので、廃止に。影響は大きく、売り上げは8割弱に落ちました」

そう語るのは生活用品を取り扱うネット商店経営者のB氏だ。もともとは店舗を構えていたが、ECの隆盛に伴ってネットでの受注のみに絞った。A氏同様、売り上げが伸びてからヤマトに営業をかけられた。以前より少々割高にはなるが、顧客の安心感のためと切り替えて数年。A氏の事例と同様に、突如、値上げの通知がやってきた。

不手際を棚上げして、正当化している

「類似の商品を取り扱う業者も出てきて、これから新しい一手が必要だなと考えていた矢先の値上げです。たしかに荷物を運んでくれるドライバーの悲惨な状況を聞けば、のまざるをえないとは思いますが」

労働環境改善のためという理由を持ち出されると反論は難しい。しかし、別の経営者はこう話す。

「ヤマトさんは創業以来、いろいろな規制を突破するため、世論を背景に国を動かしてきた。だから消費者を味方につけるのがうまいし、その手腕には感心していた。しかし、この春以降、メディアへの露出の仕方を見ていると、不手際を棚上げして、正当化しているようにも感じる。要はあざとい。日通、佐川がさじを投げたアマゾンを拾いにいって、パンクしたように見える」

アマゾンの取り扱いについては、B氏も不満がある。

「ある人から『アマゾンに出店したらどうですか』と言われました。ヤマトと直接取引するよりも、アマゾン経由のほうが安くなると。ヤマトとアマゾンが交渉中ですが、われわれよりも安い値段で落ち着く可能性を考えると複雑な気持ちです」

9月28日、日経新聞はヤマトとアマゾンの運賃交渉が大筋合意に至ったと報道。それによれば、「ヤマトのアマゾン向けの運賃は全体平均の半分の280円前後とされる。両社は値上げすることで大筋合意し、400円台以上とする方向で最終調整している」。

今回の値上げに際して、アマゾンの配送を引き受けたことがきっかけになったという見方は根強い。荷物総量の1~2割を占める超大口顧客のアマゾンには甘く、中小企業をいじめているのでは……。そんな批判はまだまだやみそうにない。ヤマトは今、何を考えているのだろうか。